ミステリ・テニス・ハムスター・モルモットについてあれこれと……
by slycat
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赤毛のカーロッタ奮闘する:無理をしない生き方

赤毛のカーロッタ奮闘する
リンダ・バーンズ/飛田野裕子 訳 角川文庫
〜カーロッタ・カーライル・シリーズ〜

1980年代、女性探偵が次々と誕生した。サラ・パレツキーの生んだヴィク・ウォーショースキー、スー・グラフトンのキンジー・ミルホーンが特に有名だが、私にはどちらもフェミニスト臭が強過ぎる。また、ヴィクのほうはだんだん私小説のようになってきて、それがますます鼻につくようになったため『ガーディアン・エンジェル』で読むのをやめてしまった。
 キンジーは結構好きでいまだに読んでいるが、あまりにも服装やヘアスタイルに構わないところ、紙パックの安ワインを好んで飲むなどの鈍感さが少々気に入らない(翻訳者が車の「ジャガー」を「ジャグワ」と表記するのも気に入らない。だって日本の販売代理店が「ジャガー」として売っているのだ。変なこだわりはやめて欲しい)。ファンの人には申し訳ないが、個人の好みなので見過ごして欲しい。f0061021_241529.jpg



 私が一番好きなのは、カーロッタ・カーライルである。しかし非常に腹立たしいことに、日本で出版された彼女の小説は、現在すべて絶版となっている。なぜこんなことになってしまうのか理解し難いが、事実は事実だ。だがつまらない小説だからと誤解されては口惜しいので、この場を借りて彼女のよさを列挙してみたい。

カーロッタ・カーライル、私立探偵。離婚歴あり、もと警官。燃えるような赤毛と11インチの足を持ち、身長は6フィート1インチ。アイルランド、スコットランド、ロシア系ユダヤ人の血が流れる。本書は、彼女のデビュー作である(原題は"A Trouble of Fools")。
 カーロッタはボストン警察に6年勤めた後、私立探偵となった。辞職の経緯についてはあまり詳しく書かれていないが、真面目に勤めても男性優位の職場で「女の子」扱いを受けていたこと、業務が売春取り締まりに終始していたこと、組織に馴染めなかった自分の性格などがぽつりぽつりと記されている。
 そもそも、一体人はなぜ探偵になるのか、何が探偵に必要な資質であるのかを考えたとき、カーロッタには大事なものがきちんと備わっている。簡単に言えば、請け負った仕事は完遂する、高い職業意識だ。たとえそのために自分の大切なものを犠牲にしなかればならないとしても。それは、馴染めなかったとはいえ警官という職業を選んだ理由であり、退職後も決して消えない正義感が彼女を突き動かす。言うなれば「お巡り根性」というものだ。

物語は「トマス・C・カーライル夫妻」宛に2万ドルの懸賞当選の通知が届くところから始まる。カーロッタは自分の電話番号を男性名で電話帳に載せているのだが、トマスは飼い猫の名前である。どうやって猫と結婚すればよいのだろう、などと考えているところに、アイルランド人の老婦人が訪ねてくる。失踪した弟を捜して欲しいという。警察とは関わり合いたくない、という彼女の依頼を受け、懐も寂しいので捜査を開始するのだが、その直後に依頼人の家に何者かが押し入り、老婦人は殴打されて入院してしまう。その上IRAだの小学生相手の麻薬密売人だのが絡むに至って、カーロッタは思いがけず大事件に巻き込まれていく。

本書の魅力を何とか説明したいので、いくつかの要素を挙げてみる。
 1)捜査
 さすがに6年も警察で我慢しただけのことはある。無駄が少なく基本が押さえられている。失踪人を捜して欲しいとの依頼に対して、まずやることは地元の病院と死体公示所への問い合わせ。当然のことだが電話で済むことは電話で済ませ、この段階でいくつかの可能性を除外した後、本格的な聞き込みおよび潜入捜査に入る。必要とあらばおとり捜査の経験を生かして売春婦にも化ける。化けてもバレないのが肝要だ。そしてたまたま顔見知りの売春婦と出くわしてしまっても、うまいこと協力してもらえるのは、彼女の人徳の賜物である。
 2)女性らしさ
 カーロッタはバレーボールを楽しんでいるので、爪は短く切っているし、指輪やブレスレットは着けない。イヤリングは嫌いだし耳に穴を開けることもしない。しかし化粧はする。
 捜査上、学生時代にバイトをしていたタクシー会社に入り込む必要が出てきて経営者である昔の恋人と顔を合わせてしまい、焼けぼっくいに火がつくことになるのだが、彼が持ってくる花束に感動しないふりをしつつ、しっかりセクシーなシルクの下着を着けているところなど、さらに可愛い。
 私が巷の女性探偵に不満なのは、自分をまるで枯れ木のように装っていることだ。カーロッタ自身、聞き込みでバーに入り男性の視線を感じると「お尻に値札をぶら下げているような気分」になるが、恋する相手に対してセクシーであろうとすることが許されないとは思わない。
 3)コロンビアの少女パオリーナ
 警官時代、捜査で出会った少女を妹として支援している。金銭援助ではなく、話し相手になり悩みを分かち合う。そして姉となったことを心から幸せなことだと自覚している。やはり大人の女たるもの、自分のことばかりにかまけてはいけない。
 4)ムーニーとサム
 以後の作品でも重要な位置を占める男性陣。ムーニーは、警官時代の上司で、カーロッタに熱烈な想いを寄せている。見た目も悪くなく、いつも彼女のことを考えてくれており、何より話が合う。捜査にもそれとなく協力してくれるし本当に頼りになる奴なのだが、今ひとつフェロモンが足りないようで、損をしている。一緒にアイスクリームを食べても「ヴァニラを注文する男なんて、私に愛せるだろうか」と思われてしまうところが情けない(ヴァニラのどこが悪いの?)。
 これに反してサムの魅力は絶大だ。何しろイタリア系なので、ハンサムなだけでなく装いの趣味もいい。一度は別れたのに、再会してしまうとすぐに惹き付けられてしまうのだった。しかし、彼はマフィアの一員である。このことが多かれ少なかれ2人の関係を難しくしている。
 5)ブルース
 カーロッタはギターを弾く。好みの音楽はブルースだ。彼女のお蔭で、ブルースのミュージシャンを大勢知ることになった。ブラインド・レモン・ジョーンズ、ローリー・ブロック、クリス・スマイザー……。CDを揃えて聴いてみたが、いずれも声が個性的な歌手ばかりで、ひとつの言葉で多くの意味が歌われていた。センスのよさがうかがえる。
 6)思いやり
 病気で引きこもっているかつての同僚を訪ねるとき、カーロッタが手土産に選ぶのは彼が好んだ安バーボンである。私はこのくだりが気に入っている。癌で死にかけている人間に酒を持って行く非常識、そういうやさしさが好きである。

事件を解決した後、彼女が感情の乱れを見せるのを嫌う人もいるだろう。しかし自分が下した決断には自ら罰を与え、差し伸べられた手にすがって自分を哀れんだりはしない。それは女だから弱いと思われたくないから、というのとは全然違う。そんな突っ張りは警官を辞めたときに捨てたのだ。
 男性の探偵たちが自然にやってきたことを極力避けることで、かえって女性探偵たちは窮屈な立場に置かれてきたと思う。奇妙な言い方だが、女性探偵だって恋をしていいのだし、誰かに魅力を感じればベッドに行ってもいい。服装や化粧など目に見える部分を整えても、「女性らしさ」の枠に閉じ込められていることにはならないのだ。こだわりを捨ててみればいい。

カーロッタ・カーライルは、女性であることを不利とせず、無理をしないでも素直に生きられる女性探偵である。そこがほかの探偵たちと大いに違うところだ。もっともっと評価されていいと思う。
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by slycat | 2006-03-04 02:41 | ミステリ
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