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親孝行、何をすれば
父が勲章を貰った。70歳過ぎれば誰でも貰えるんだと両親は言っていたが、そんなものなのだろうか。叙勲のため前日赤坂のホテルに泊まることにしたから、夕食でも一緒に食べないかと母に誘われ、のこのこ出かけたのが13日のこと。
両親は千葉に住んでいるので、会おうと思えばいつでも会えるのだが、母とは5年以上、父とは8年近く顔を合わせていない。会社の友人(13歳年下)にそう話すと、「へえぇ、格好いい」と言われたが、格好いいんだか悪いんだか。 普通の人はお盆やお正月に実家に帰るのだろうが、何しろ、実家と言っても一度も暮らしたことがない家で自分の部屋があるわけでなし、幼馴染みがいるわけでもなし、土地勘もない。しかも最寄駅には車で迎えに来てもらわなければならない。息子だけは夏休みに遊びに行かせていたが、それも高校に入学してからは何となく足が遠のいていた。 しかし「今のうちに思い出作りをしようかなと思って」と言われれば、出かけないわけにもいかない。夕方6時に会席料理の店を予約したということだった。予定では少し早めに会っていろいろ積もる話をするはずだったが、両親はホテルに着いたらいろいろと用事に追われ、結局6時半頃両親と顔を合わせた。 何年ぶりかで顔を見た両親は老いていた。第三者的に見れば2人とも結構若々しいのだが、以前と比べれば明らかに感じが変わっていた。不肖の娘はどうしてよいのかわからない。昨年入社した会社がちゃんとしたところだと安心させてやりたかったが、渡そうと思っていた名刺を忘れてきてしまったので、たまたま鞄に入れてあった社員証を見せたりする(ほかに証拠がなかった……)。 父は少々耳が遠いので、何かというと母が通訳を買ってでるが、それがかえって父の機嫌を損ねているのではないかとハラハラする。息子はといえば話しかけられても「はぁ、そうです……」などといつになく口数が少なく、全く頼りにならない。 おまけに料理が途切れてなかなか運ばれてこなくなったものだから、父が店の人に何度も文句を言う。先日観た映画『グラン・トリノ』のイーストウッドが思い出される。そういえば子供の頃、せっかくの家族旅行なのに父に叱られて気まずい思いをしたことが何度もあったっけ(だが、私自身、飲食店のサービスがよくないと苛々してしまい、息子に「恥ずかしい」と言われる)。 食事が済んで店を出ると、父が「大したことなかったな」などと話しかけるが、「そうだね」と言うわけにもいかないではないか。「そんなことないよ、私たちじゃなかなか行けない高級なお店だもの」などと答えてみる。 両親が泊まる部屋を見せてもらい、せっかくだからと写真を撮ったりしているうちに9時近くになってしまう。あまり遅くまでお邪魔しても、と帰ることにすると、母がエレベータの前まで送ってくれた。もっと話をしたかったのだと思う。 しかし何をすれば親が喜ぶのか、40過ぎてもさっぱりわからない。電話するとか手紙を書くとか、それだけではやっぱり足りないだろうか……。こんな顔でも見せれば喜んでくれる、というのであれば、もっと頻繁に見せなければいけないな。今更ながら親孝行とは何なのかに悩み、いつか来るであろう別れが現実的になってきたことに怯えている。
by slycat
| 2009-05-15 01:46
| 日常のこと
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