人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ミステリ・テニス・ハムスター・モルモットについてあれこれと……
by slycat
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
カテゴリ
全体
ハムスター
テニス
ミステリ
日常のこと
音楽
その他スポーツ
大相撲
映画
小説
ドラマ
高校受験
文楽
旅行
ウサギ
モルモット
未分類
以前の記事
2019年 07月
2016年 08月
2016年 03月
2016年 02月
2012年 09月
2011年 07月
2011年 03月
2010年 10月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 02月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 07月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 03月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 11月
2007年 10月
2007年 09月
2007年 08月
2007年 07月
2007年 06月
2007年 05月
2007年 04月
2007年 03月
2007年 02月
2007年 01月
2006年 12月
2006年 11月
2006年 10月
2006年 09月
2006年 08月
2006年 07月
2006年 06月
2006年 05月
2006年 04月
2006年 03月
2006年 02月
最新のトラックバック
お気に入りブログ
More to life
はむぅの宴
la mer | アンデ...
よる記。
メモ帳
ライフログ
検索
タグ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧


『グッバイ、レーニン!』

グッバイ、レーニン! 2003年、ドイツ ヴォルフガング・ベッカー監督

大好きな映画である。公開時、息子と一緒に恵比寿の映画館で観た。その後何度かテレビでも観たが、ベルリンの壁崩壊後20年経った記念に最近「ザ・シネマ」チャンネルで放送されたので再び観てみた。何度観ても面白いし、なぜか観るたびに涙が出てしまう。子供のいる人、特に男の子のいるお母さんにはぜひ観て欲しいなと思う。観た後、一緒にこの映画について語り合いたいな。

ベルリンの壁崩壊前後の東ドイツを舞台にしたこの映画は、肩肘張らずに観られる楽しい作品だ。一緒に観に行ったとき、息子は小6か中1だったと思うが、隣の席でゲラゲラ笑っていた。再見した今回も便宜上隣に座っていたが、やはり同じシーンでゲラゲラ笑った。この作品、特に「コメディ」に分類される映画というわけではないのだが、監督が笑いのツボを心得ている人で、タイミングがバッチリだからだろう、常に笑える。例えば息子がもう少し成長して、『2001年宇宙の旅』を観たら、また別のシーンでも笑えるようになると思うが、何も知らなくても十分おかしい。

しかしこの作品には、笑いだけではなく、ちゃんと仕掛けもある。心臓発作による昏睡から目覚めた母親にショックを与えまいと、統一前の東ドイツを再現すべくあたふたする主人公の奮闘ぶりが面白いのだが、一所懸命再現に没頭しているうちに徐々に当初の目的から外れていき、ついには自分自身の理想とはどういうものなのかに気づいていく、その辺りが深い。

もはや「東ドイツ」は存在しない、ということが母親にバレた?という危機に際して、主人公に与えられた起死回生の「武器」は、映画オタクの親友が協力して作ってくれるビデオの「映像」である。この映像が抱腹絶倒の傑作なのだが、ウソで固めた映像を母親に見せているうちに、だんだん映像の世界に主人公自身が影響されていく。監督は映像の力を信じている。だから映画監督になったのだろうし、だから説得力があるのだろう。
 このくだりを観ていると、愛国心というのはやはり、国や政治や他人から押し付けられるものではなく、自ら目覚めるものであるべきだなぁとつくづく思うのである。教科書なんかで洗脳してはいけない。人は皆、それぞれ自分の、自分だけの愛する国をもつべきだ。

親友が「俺の最高傑作だ」と自負して主人公に渡した最後のビデオを母親に見せるシーンは圧巻だ。「これが僕の東ドイツだ」。主人公を演じたダニエル・ブリュール、誇りに満ちて母親を見つめる表情がよかった。もう一つよかったのは、それを見つめる母親の表情だ。この映画を一緒に観た息子にはわからないだろうし、恐らく作品の中の主人公にもわかってはいない設定なのだろうが、親にとって最も嬉しいこととは、子供が立派に成長したという証しを得ることだ。母親にショックを与えてはならない、という優しい気持ちから始まったウソが進化していき、結果として親子の絆を確固たるものにした、その真実が激しく感動的な映画である。ここでどっと泣く。

しかし正直なところ、初見のときには泣かなかったところで今回じわじわ泣いてしまった。映画が始まってすぐ、主人公がまだ子供の頃のエピソードが語られる場面である。自分の息子もいまや18歳、小さいときはよかったなぁなどと思うことが多い昨今、幼い子供の無償の愛を見てしまうと、無条件に涙が出てしまう。あぁ歳をとったものだ。

史上に残る名作、と呼ぶには少々恥ずかしいが、よい映画というものは、何度観ても面白いものだし、何より観るたびに印象が少しずつ変わるものだと思っている(『東京物語』然り)。そういう意味で言えばこの映画は「よい」と称するに値する、そう思う。
by slycat | 2009-11-12 00:14 | 映画
<< 内憂外患 楽天オープン決勝 >>