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ミステリ・テニス・ハムスター・モルモットについてあれこれと……
by slycat
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本物の凄み

横田めぐみさんのご両親がテレビに映ると、思わず襟を正してしまう。忘れられないのは、めぐみさんのお子さん、ヘギョンさん(ウンギョンさん?)の映像が初めて公開されたときの、横田滋さんのお顔である。
 ずっと会えなかった孫があのような清々しいお嬢さんに育っていて、どんなに嬉しかったことか。例えば我が家のどら息子は、可愛いとは思うが、口から出てくる言葉は汚いし、下らないバラエティ番組ばかり見ているし、音楽の趣味も悪ければ本1冊読まず漫画ばっかり、とげんなりすることが多い。しかし、あのときテレビに映った少女は、まさに理想の孫、私に娘や孫がいたらああいう子であって欲しい、と願う少女だった。しかも、誰が見てもおじいちゃんにそっくり、いなくなったお嬢さんにそっくりの顔。どんなに愛しく思ったことだろう。
 なのに、抱きしめることもできず、声をかけることも叶わず、ただ画面を見つめることしかできない。モニターを見ている滋さんのお顔は、孫に見とれているようだった。何とも言えない、その表情に胸打たれた。あんな表情は、どんな名優にも再現することはできないだろうと思われた。
 同じ表情を、今度は金 英男さんの帰国の際に、また見てしまった。少し成長したお孫さんの映像が、再びテレビに映ったからだ。「大きくなったな」「きれいになったな」「ますます娘に似てきたな」……恐らくいろいろな思いが頭の中を巡ったことだろう。なりふり構わず、孫に会いたい!と言えばいいのに、会ってしまえばいいのに、と凡人は思うのだが、横田さんご両親はもっと大きなゴールのために我慢している。彼らが我慢しなければならない状況を、私は心から憎む。

日曜のNHKスペシャルでも、はっとする表情を見た。ワールドカップ、日本対ブラジルの試合を見守った人々のドキュメンタリーである。若いときにブラジルに渡ったご夫婦が、サッカーの応援をする姿が映された。
 夢を抱いてブラジルに移住し、その地でご苦労なさったご夫婦が、ブラジルの人々の温かい支えにより今日まで生きてきた過去が短く語られた後、移民たちが集まるサッカー応援の場が映る。最初から、ご夫婦はブラジルを応援していた。彼らがいま在るのは、ブラジルの人々に助けられてきたからだ、恩返しだ、という気持ちがあったからだ。
 奥様のほうは終始一貫していたが、ご夫君のほうの表情は微妙に変わっていく。先制点を取ったのは日本だったが、その後ブラジルが次々にゴールを決めていくと、ご夫君の応援は日本寄りになっていった。結局日本は負けるわけだが、最後に彼は、少し照れくさそうに「二つの祖国だからね」とおっしゃった。その表情の変化に泣けた。国を愛するというのは、こういうことなんだな、と思った。
 彼らが生きるために必死になっていたとき、日本は何も助けてくれなかった。助けてくれたのは文化も風習も違うブラジルの人たちだ。ブラジルを愛しているし、恐らく骨を埋めるつもりなのだろう。それでも、明らかに劣勢になっていく日本チームを目の当たりにしたとき、やはり彼は日本を応援したくなった。その気持ちは、彼にもうまく説明できないだろう。自分に日本人の血が流れているから、だからなんだ、としか言えないだろう。

私は映画や小説、ゲームが大好きなので、作り物だからこそ人を感動させる、作り手の意図や愛情のエッセンスを大切にしたいと思っているが、人が誰か(何か)を愛するときの表情というものは、どうやっても人工的に作ることはできないのだな、と思わされることがある。たまたま同じ週にどきっとする表情を見せられたので書いてみた。本物というのは、つくづく凄みがあるものなのである。
by slycat | 2006-07-04 00:39 | 日常のこと
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