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ミステリ・テニス・ハムスター・モルモットについてあれこれと……
by slycat
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映画の日、だったので

風邪をこじらせてしまい会社を休んだ。午前中は病院で薬をもらい、帰宅したらずっと寝ているつもりだったのだが、ふと「あ、今日は映画の日?」と思い出し、突然根性を出して映画館へ。おかげで今、身体の節々が痛い…馬鹿な私。土日こそはおとなしく寝ていよう。

せっかく観たので感想文を少し。

『プラダを着た悪魔』 The Devil Wears Prada 2006年・米
ふだんはこういう「お洒落」な映画は観ないのだが、風邪っぴきという体調でもあり軽くて楽しい作品がいいな、と思った。もうひとつ、メリル・ストリープの役がどのように描かれているのか興味があった。例えば昔『ワーキングガール』という映画があったが、シガーニー・ウィーバーの扱いはひどかった。あれと同じなら全然面白くない。

ジャーナリスト志望のアンドレア(アン・ハサウェイ)が、就職活動でたまたま引っかかったのが一流ファッション雑誌『Runway』編集長のアシスタント職。アンドレアはファッションに全く興味がないが、ここの編集部で1年頑張ればどんな職場でも通用する、というので頑張ることにする。だが編集長は気難しく扱いづらく、アシスタントの仕事は決して容易ではなかった…というのが前半部分。メリル・ストリープ演じるミランダに認めてもらうため、無理難題を必死で解決しようとするヒロインは健気で愛らしい。

仕事が忙しいため、ボーイフレンドとの間に隙間風が吹くエピソードがあるが、見ていて思わず「こんな男とは別れなさい!」と言いたくなった。社会に出たばかりでこれから仕事を覚えなければならないときなのに、何なんだこいつは協力もせず。

この手の映画は大体観なくても結末はわかってしまうもので、この作品もご多分に漏れず言いたいことは同じなのだが、描かれる過程は面白かった。何よりやっぱりメリル・ストリープがいい。性格に多少難ありでもいいじゃん、仕事ができるんだから。本当に舌を巻くほどの仕事ぶりで、惚れ惚れする。
 生き方は人それぞれなので、もちろんヒロインの生き方も絶対ではない。ミランダをただの悪役として描かなかったところに、大いに共感がもてた。

……FOXのドラマ『ニック・フォーリン』で主演を演じたサイモン・ベイカーが出ていて嬉しかった。あの笑顔と目尻の皺がいいなぁ…。

『トゥモロー・ワールド』 Children of Men 2006・英
今日の本命はこっち。映画館で予告編を見たときから、観たいと思っていた。その後原作者がP・D・ジェイムズだと知りびっくり。いつSFなんて書いてたんだろ? 早速原作を読んだ。
 イギリスには優れた女性の推理小説家がきら星のごとくおり、P・D・ジェイムズはクリスティと並ぶ巨匠であるが、私はちょっと彼女を苦手としている。非常に緻密な描写で文章が硬く、読みづらいからかもしれない。彼女の代表作『女には向かない職業』は、女性の探偵を語るとき必ず先駆けとして挙げられる「聖典」だが、私は乗り切れなかった。
 それでもなおかつ原作にチャレンジしたのは、「子供が生まれない未来」というテーマを素通りできなかったからである。今後ますます進むであろう少子高齢化に、人として、母親として、正面から向き合わなければならないと感じている。……で。今回は読んでみて面白いと思った。さすがにミステリの女王、目のつけどころが違う。

かつて「読んでから見るか、見てから読むか」という出版社のキャンペーンがあったが、オリジナル脚本による映画というのは意外に少ないので、映画を観ようかな、と思うと常にこのコピーがつきまとう。今回は、監督が原作を読んでいない、とあとがきに書かれていたため、映画は原作とは別物だ、という安心感があった。……で。やっぱり別物だった、いい意味でも悪い意味でも。

結論から言えば、この映画はかなりカットされたのか、あるいは脚本が未消化なまま映画化されたかのな、という感想。監督の思い入れが強過ぎたのかもしれない、わかりづらいところが多々あった。大胆な改変を行ったわりには余分な設定が残されていて、アンバランスだ。どうせなら、もう少し「説明」の部分を残して、3時間くらいの作品にしてもよかった。

原作では1995年を最後に子供が誕生しないことになっており、1995年生まれの子供たちは「オメガ」と呼ばれている。映画では出てこない。オメガたちは美しいが冷酷で、今の日本でもしばしば起こるオヤジ狩り、ホームレス狩りなどを平然と行う。
 少年犯罪が起こるたびにマスコミが騒ぎ立て、法律が少年に甘い、もっと厳しくすべきだ、と子供たちを非難する声が高まるが、少子化どころか自分たちが最後の世代となり、社会が老人ばかりとなって何をしてもいちいち注目されるようになったら、どうしたって嫌気がさす。そのやるせない気持ちの捌け口が、暴力へ犯罪へと向かうのも必然。私はオメガを創造したP・D・ジェイムズの慧眼にいたく感心したので、映画で取り上げられなかったのは残念だ。

映画では、外国人を排除する政府の独裁体制を強調することによって末期の世界を描く。原作でも「国守」が独裁政治を行っているが(主人公は国守のいとこにあたる)、人々が陥っている絶望感は必ずしも政治のせいではない。
 このあたりはむしろ原作よりわかりやすいし、反政府主義者たちと政府側との闘いはリアルで迫力あるものとなった。だが半面、安易な感じも否めない。地球に未来がない、何をしても無駄なのだ、という静かな虚無感は伝わってこない。

しかし、この世に希望があるのは、今この瞬間にも世界のどこかで新しい生命が誕生しているからこそ、という事実、これを訴えているだけでもこの作品には価値がある。
 たとえ自分の夢は叶わなくても、自分の子供たちの夢は叶うかもしれない。やりかけた仕事を最後まで見届けることができなくても、子供たちが完成させてくれるかもしれない。今はこんな時代だけど、子供たちの時代にはもっといい世の中になっているかもしれない。そういう朧げな希望あってこそ、人は明日を迎えることができるのだ。

子供は未来である。まさにそれを表している場面があって、そこには図らずも感動した。どちらかを選べと言われれば原作を取るけれど、映画も捨てたものではない。映像にしかできないこともある。そこだけでこの映画を評価したい。
by slycat | 2006-12-02 02:25 | 映画
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