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ミステリ・テニス・ハムスター・モルモットについてあれこれと……
by slycat
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文楽初春公演:その1

1月12日、大阪・日本橋の国立文楽劇場で行われる「文楽初春公演」に出かけた。今回はひとり旅である(息子はアルバイトで忙しい)。

羽田発8:00の飛行機で伊丹空港へ。昨年は空港から電車を乗り継いで行ったのだが、今回はリムジンバスに乗る。飛行機が20分ほど遅れたので不安だったが、9:25発のバスに乗ることができた。
 乗ってみればこっちのほうが断然早い(35〜40分)。車酔いもしなかったし、途中通る中之島の中央公会堂など、美しい建築物も見ることができた。高速を下りてからなかなかバスが進まないのは仕方がない。
 近鉄上本町でバスを降りる。近鉄百貨店でお弁当でも買おうかと思ったためだが、羽田で食べたホットドッグが胃にもたれていたので、代わりに近くの洋菓子店で息子へのお土産を先に買う。
 昨年11月に行ってみた店で、チョコレートムースやメレンゲのケーキが滅茶滅茶美味しいのだが、生ケーキを東京まで持ち帰るわけにもいかず、チョコレートやクッキーをあれこれ選んだ(樋口一葉が飛んで行った)。

雨が降っていたので傘を買い、歩いて行けない距離ではないものの、地下鉄で日本橋へ。大阪は暑かった。汗をかきながら到着すると、文楽劇場は、すでに大勢の人で賑わっていた。
 第1部の席は、床のすぐ傍、前から4列目。東京公演の際には「あぜくら会」会員の友人が1時間以上も粘って電話してくれ、やっとのことでよい席を確保してくれるのだが、普通にネット予約でこの席が取れた。劇場が大きいからだろうか。舞台の上、中央にはめでたい「鯛」が飾られていた。
文楽初春公演:その1_f0061021_1433339.jpg

第1部
七福神宝の入船
前日一睡もしておらず、飛行機の中でも眠ることができなかったので、公演中に寝てしまうのではないかと不安を抱えながらの鑑賞だが、これなら眠るわけがない、という豪華絢爛な演目。こういう舞台を観て1年を始められるとは、大阪の人たちは幸せだ。
 舞台いっぱいの宝船、その上には七福神。衣装もきらびやかで少しエキゾチック、いつもと違う。この七福神たちが1人ずつ芸を披露するのだが、三味線、琴に胡弓と続く、その音色の素晴らしさ。よくぞ日本人に生まれけり、と思う(三味線、琴にしても胡弓にしても、元々は中国からの輸入なのだろうがそこは気にしない)。ふだんロックやポップスしか聴かない私の貧しい耳にもぐぐっと入ってくる。最初の三味線のときは人形がやや遅れたが、その後胡弓の演奏など、人形の手の動きと楽器の音がぴたりと合って、いやぁ、堪能しました。
 ただ1ヵ所、生ビールのジョッキが出てくるところがあって、お客さんはみんな喜んでいたみたいなのだが、私にはちょっと……。頭、硬いですかね。気持ちとしては、そこまでサービスしてくれなくても、十分楽しめるのに、というところである。

ここで30分の休憩。売店で「おにぎり弁当」を買い、客席でかっ込む。三宅坂で売られているものよりでかい。全部食べ切れなかった。

祇園祭礼信仰記
これまた美しい舞台。舞台上部からしだれ桜が2列に咲き乱れている。将軍足利家乗っ取りを企てる松永大膳と、それを阻止しようとする小田信長の対決を描いたお話だそうだ。そこに画家雪舟の孫娘の仇討ち物語が絡む。

〜金閣寺の段〜
金閣寺の一室で、松永大膳と、その弟鬼藤太が碁を打っている。大膳は先の将軍足利義輝を殺害しその母慶寿院を拉致監禁、将軍家の御旗を奪った悪人であり、とんでもないエロ親父でもある(しかも言うことが一々いやらしい)。こいつが美しい雪姫に自分のものになるか雲龍の絵を描くか、と迫る。雪姫は父親を何者かに殺され、秘伝が盗まれてしまったため雲龍の絵は描けない。また、直信という恋人があるため(いてもいなくても、だろうけれど)大膳なぞの言うことは聞けない。しかしこのままでは恋人の命が危ういため、雪姫は苦しむ。
 一方、この日、大膳は信長の元を去ったという此下東吉(実は真柴久吉;豊臣秀吉)を軍師として採用することになっており、東吉が寺にやって来る。囲碁勝負を始める大膳と東吉。東吉は、これから自分を雇い入れようとする人物に対してもわざと負けたりしない、という態度を示して逆に大膳の歓心を買い、さらに知恵のあるところを見せてまんまと大膳の信用を得る。

〜爪先鼠の段〜
手本がないと絵が描けない、という雪姫に、これを見ろと大膳が剣を出し滝にかざすと、あら不思議、滝に龍が現れる。実はこれが雪舟の秘伝で、雪姫の父親が殺された際に行方不明になっていた「倶利伽羅丸」だった。敵をあざむくため秘(伝の)書と言い振らしていたのだが、実は書でなく剣で、倶利伽羅丸を所持しているからには大膳こそが父の仇だった、ということなのである。
 大膳に斬り掛かろうとする雪姫、しかしあっけなく縄で縛られてしまう。祖父雪舟が涙で鼠の絵を描いた話を思い出し、桜の花びらで鼠を描く雪姫。すると絵は生きた鼠となり、縛めを食い切る。役目を果たした鼠が桜の花びらに戻る一瞬がとてもきれい(そういえば、子年だから鼠の演目だったのね)。
 逃げようとする雪姫の前に立ちふさがる鬼藤太、しかしそこへ真柴久吉が現れ姫を救う。姫を逃がした久吉が、慶寿院を助け出すため金閣寺のてっぺんまで上っていくところが驚きの、3段にわたる舞台装置。久吉がどんどん上に行くのを示しているのだが、圧巻だった。面白い!

傾城恋飛脚
〜新口村の段〜
寝不足のため、眠気はもちろん身体中が痛み出してきたが(あちこちツボを押しながら耐えた)、ここはしっかり聴かなければ。何しろここできちんと聴いておかなければ、2月まで住大夫さんは聴けないのである。血中住大夫濃度が下がって調子が悪い今日この頃、この演目のためにはるばる飛行機に乗ってやって来たのだ。
 学生の頃好きだった富岡多恵子の『子供芝居』の中で主人公が演じるのが、遊女梅川。近所に住み何かと優しく接してくれるお妾さんが「梅忠やるんか」と感心するくだりがある。子供が大人を演じるにあたり、周りの人々の仕草を盗まなければならない、ということが徐々に主人公の重荷になるのだが、その頃から「原典はどんなお話なんだろう」と思いながら歌舞伎を観ることもなく、近松を読むでもなく、だらだらと年齢ばかり重ねてきた。この日が初めての“梅忠”体験となる。だけど『冥途の飛脚』じゃないじゃんと言われそうだが、まぁ、とにかく。

馴染みの遊女、梅川がほかの客に身請けされるのを止めるため、養い親の飛脚問屋から預かった大事な為替銀に手をつけてしまった忠兵衛、梅川とともに実家のある大和・新口村に逃げて来る。
 さすがにのこのこと実家には戻れず、父の下で働く忠三郎の家を訪れると、すでにこの地にも大阪から詮議の者が来ており、紙屑屋などに化けたスパイが付近をうろうろしていることがわかる。外にも出られず、忠三郎の帰りを待っていると、たまたま忠兵衛の父、孫右衛門が通りかかり、2人の目の前で足を滑らせて転ぶ。
 外へ飛び出し、孫右衛門を介抱する梅川。その親切に、この女性こそが我が子の嫁と気づく父。忠兵衛が逃亡したため、身代わりとなって入牢している養い親のことを思えば、可愛い我が子とはいえ自首を勧めるほかはない。子への愛、養い親への義理が錯綜する、ここの語りが見事である(今じゃない、のところで客席から笑いが起こったのには納得できず)。眠くてたまらないのに、勝手に涙が溢れてくる。あぁ、やっぱり無理してでも今日来てよかった、そう思った。

第1部が終わり、いったん外に出てでんでんタウン近くのホテルにチェックイン。また劇場に戻る道程が、寝不足の身体に辛かった。傘も邪魔だが、持って出なければ必ず降られる、という雨女なので渋々再び傘を持ち、再び文楽劇場へ……。
by slycat | 2008-01-16 03:44 | 文楽
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