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ミステリ・テニス・ハムスター・モルモットについてあれこれと……
by slycat
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夏休み文楽特別公演:その2

夏風邪で苦しんでいるうちに2週間以上経ってしまったが、「その1」を書いたからには「その2」を書かないわけにはいかない。

大阪2日目(8月2日)、息子は落語を聴きたいというので南森町まで送って行き、昼食をとった後別れた。私のほうは日本橋で文楽を聴くのである。
 文楽劇場に着くと会場は満員。近松だし、映画化されたこともある有名な作品だし、何より土曜日だし、当たり前か。チケットがとれたのは幸運だった。

鑓の権三重帷子
〜浜の宮馬場の段〜
雲州松江候の上小姓、笹野権三は鑓の名手でしかも美男。ある日馬場で遠乗りをしているところへ恋人のお雪が乳母とともに現れ、いつ祝言をあげてくれるのかと迫る。ちゃんとした媒酌人がいればいつでも、と答える権三。お雪は権三に手縫いの帯を渡す。そこへお雪の兄、川側伴之丞が現れ、お雪は姿を隠す。
 この伴之丞がイヤな奴。いろいろ言いがかりをつけた挙げ句に馬で競争しようというので、いやいや応じると、落馬して大怪我をする。
 そんなところへ今度は権三と伴之丞が師事している茶の湯の師匠、浅香市之進の舅、岩木忠太兵衛がやってきて、若君ご祝言に伴い国元でも茶の湯の会を行うから、留守中の市之進に代わって茶の湯を執り行うように、と言う。

伴之丞がいかにも悪そうで、こんな奴の妹と結婚したら絶対不幸になる、と思うのだが、よりによって……。この伴之丞、「馬から落馬した」などと言うのが笑える。あんまりオツムのほうもよろしくないようだ。

〜浅香市之進留守宅の段〜
茶の湯の師匠、市之進の留守宅。妻のおさゐは37歳という年齢でいまだ若々しく美しい。おさゐは長女の髪型が気に入らないから直してやろう、と娘の髪を梳いてやりながら、こんなによい娘は並の男には嫁がせたくない、できれば笹野権三のような美男でしかも人格に優れたものに嫁がせたいと言う。娘のほうは、権三は年が離れているから嫌、と言うのだが、なぜか母親は自分も年の差結婚だったとえらく熱心に勧める。
 そんな折も折、噂の主の権三が訪ねてきて、今回茶の湯を執り行わなければならないので「真の台子」を伝授してくれないかと頼む。おさゐは真の台子は一子相伝だから無理だが、娘の婿になるのであれば子となるわけだから伝授してやろうともちかける。
 そこへ間の悪いことにお雪の乳母が訪ねてきたので、おさゐは夜、数奇屋で会う約束をして権三を帰す。実は以前から伴之丞がおさゐに言い寄っており、彼の家の者だというのでおさゐは会いたくない。乳母はお雪と権三の祝言にあたって媒酌人を頼みたいと言っている。先ほど、娘の婿になることを承知したというのに、実はお雪という恋人がいたことがわかり、おさゐの心中は穏やかではない。

〜数寄屋の段〜
約束通り、権三は夜、浅香家の数寄屋にやって来る。あらぶる心を鎮め、おさゐは権三に真の台子を伝授する。するとそこへ、伴之丞が忍んで来る。おさゐに横恋慕している彼は、この機会におさゐと伝授の両方を手に入れようと企んだのだった。しかし、先に権三が来ているのに驚く伴之丞。権三は権三で、急に蛙の声が止んだのを怪しみ、誰か来たのではと立ち上がると、それまで内心の怒りを抑えていたおさゐが突然いきり立ち、お雪が訪ねて来たのだろう、その帯は何だ、と権三のしていた帯を庭に投げ捨てて、自分の帯をほどいて「これを締めろ」と権三に迫る。権三はさすがに腹を立て「私は女物の帯などしたことはない」とおさゐの帯を同様に庭に投げる。人間、どんなときでも腹を立てるものじゃない。これが運の尽きで、伴之丞に帯を拾われてしまい、2人が不義を行っていた、と叫んで逃げ去って行く。こうなっては申し開きができない、と切腹しようとする権三。しかし、せめて夫市之進を立てて妻敵として伐たれてやってくれ、とおさゐに頼まれ、2人は屋敷を後にする。

映画化の際にどういう演出になっていたのか、観ていないのでわからないが、娘の婿になる男に恋人がいたことを嫉妬する、というのは難しい演技だったのではないか。正直言って、私にはよく理解できない(おさゐより年上なんだけれど……)。それほどまでに娘を愛しているということなのだが、権三はいわばアイドルなのかもしれない、おさゐ自身にも恋心とはいかないまでも、何か執着心があったのかな。相手の恋人が縫った帯を投げ捨てて、自分の帯を締めてみろ、と言う逆上ぶりが凄い。
 休憩時間に、この「帯事件」について話している人たちがいて、男性のほうが「帯をほどいたら着物がバラバラになっちゃうんじゃないの」と言うと、女性が「帯はいわば飾りで、ちゃんと別の紐で止めてあるから大丈夫」などと答えていたのが面白かった。

〜岩木忠太兵衛屋敷の段〜
市之進とおさゐの娘たち2人は舅の忠太兵衛に預けられ、息子虎次郎は市之進の弟子に預けられている。おさゐの弟岩木甚平が現れ、不義の2人は見つからなかったが伴之丞の首は討ったと報告。甚平と市之進で権三たちを討つため出かけようとすると、虎次郎が現れ自分も一緒に行くと言う。虎次郎には留守宅を守れと言いつけ、市之進と甚平は出かけて行く。

子供たちが、お母さんに罪はないから連れて帰って、権三だけ殺して、と頼むのが哀れである。そりゃあそうだろう。年端もいかない子供たちに不義の何のとわかるわけがない。お母さんにしても、実際は何も悪いことをしていない。子供を愛するあまり、うっかり罠にハマってしまった気の毒な人である。このあたり涙を誘われる。

〜伏見京橋妻敵討の段〜
盆踊りの夜、若い男女が踊りを楽しんでいる。そういえば『桂川連理柵』での心中場面もこんな感じだった。これから死ななければならない運命の者たちと、今を生きている人たちの対比。ついに市之進はおさゐ・権三と出会い、おさゐは片手討ちにされ、権三も潔く討たれる。白装束に身を固めた2人の遺体が折り重なる。

おさゐはあまり多くを語らないうちに斬られてしまったが、市之進は最後まで妻が不義を冒したと思っていたのだろうか、それとも何らかの不幸な偶然からこうなったとわかっていたのだろうか、その辺が非常に気になった終わり方だった。権三も馬鹿だなぁ、お雪とさっさと一緒になっていれば、あるいは最初から伴之丞なんかの妹と付き合ったりしなければ、でなければいくら師匠の妻に言われたからといって、女性1人しかいないところへ夜、のこのこと出かけたりしなければ……。

お話にはついていけないところがあるものの、文雀さん、蓑助さんは相変わらず見事に人形を遣っていらっしゃって、非常に満足した。夏の公演ということで、太夫さんたちも人形遣いの方々も夏物の着物をお召しになり、これがとても爽やかだった。いいなぁ、東京でも夏公演やって欲しい。
 会場の熱気もとても好ましい。長年のファンが文楽初体験の人にいろいろと教えてあげている場面などがあちらこちらで見られた。さすがに本場だな、と改めて思った。

息子のほうは無事ホテルに帰り着いており、合流してなんばで夕食をとった。息子は息子で楽しんだようである。それぞれ好きなものをそれぞれに楽しむのも悪くない。最後に、hanbusさんタケゾウさんに教えていただいた「丸福珈琲店」でコーヒーを飲み、ホテルに戻った。今回も収穫の多い大阪旅行となった。
by slycat | 2008-08-18 00:18 | 文楽
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