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ミステリ・テニス・ハムスター・モルモットについてあれこれと……
by slycat
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金メダル:楽しめる強さ

金曜日の朝、9時頃テレビをつけた。ちょうどフィギュアの表彰式が行われていた。しかし画面を見たとき、一瞬何が行われているのか理解できなかった。えっ? えっ? 荒川静香だ。真ん中だ。真ん中ということは……金メダル、とったんだ〜! 伊藤みどりでさえ銀だったのに、金メダルだぁ〜! なぜか動揺した。
 私は愛国心の強い人間であるが、日の丸も君が代も好きではない。日本人選手が活躍すれば嬉しいし、なんだかんだ言いながらテレビの前で応援してきたが、メダルがとれなくても一向に構わなかった。彼らがベストを尽くしたのなら、結果をとやかく言う権利はない。彼らは自分のために頑張るべきであり国のために頑張る必要はないと思っていた。しかし、この表彰式で国旗が揚がり、荒川選手の唇が君が代の歌詞に合わせて動くのを見て、不覚にも涙がこぼれた。



メダル獲得後、当然のことながら各メディアからインタビュー責めにあっている荒川さんだが、一貫して変わらない答えは「選手村に入ったときから、楽しむつもりだった」ということだ。スケートの実力にふさわしい、賢明な答えだと思う。
 メダルをとると、その人の人生がいろいろな面で切り取られ、さまざまなメディアで紹介されることになる。引退まで考えたこと、採点方法の改定により培ってきた技術では高い点数がとれなくなったこと……。いかに苦労を重ねてきたかが延々と語られ、今回の金メダルが苦労の賜物であったことが強調された。だけど本当にそうなんだろうか?

社会に出た頃、10歳年上の編集長が頭の固い人で、記事を書くときは必ず取材対象の「艱難辛苦」がなければ没になった。彼は、女性は男性の3歩後を歩くべき、食卓は家族全員で囲むべき、など私の親の世代でさえ驚くような古臭い考え方をする人だった。艱難辛苦を書かなければならないことがいやでいやでたまらなかった。人生を前向きに、ずっとハッピーに過ごしてきて、ハッピーなまま成功を掴む人だっているのではないか。そう思っても没になっては困るので、無理矢理「彼女は苦労してきた」と書くしかなかった。結局2年半で嫌気がさし、仕事へのモーティヴェーションも薄れて、編集長と大喧嘩した挙げ句にその職場を辞めた。

荒川さんが苦労してこなかった、とは思わない。今までどんなに悩んできたことだろう。想像すると本当に気の毒だ。ご両親が可愛い娘の苦しむ姿をどのように見守ってきたのだろうと思うと、それだけで泣けてくる。
 しかし、言わずもがなだが出場してくる選手はみんな苦労している。どんなに苦労しても、報われないときは報われない、非情な舞台がオリンピックというものだ。だったら、楽しんだ者勝ち、ではないか? 荒川静香はオリンピックを楽しんだ。点数に結びつかないイナバウアで観客を魅了した。そのことが私を感動させてくれる。

本命だったが銀に終わったコーエンの言葉がいい。
"No, I didn't cry," Cohen said. "I don't usually cry unless I'm angry. I'm not really angry, more of a letdown. Ultimately, it's four minutes of one day in my life." (いいえ、泣きませんでした。私は怒りがないかぎり泣かないんです。私は(自分に対して)怒っていません。思っていたより期待外れだっただけです。結局は、私の人生の中のたった4分間に過ぎないのです)
"I definitely didn't think I was going to get any medal when I finished. So it was a nice surprise." (演技を終えたとき、メダルがとれるとは思いませんでした。だから(銀は)嬉しい驚きだったわ) (Sports Illustrated、SI. comより)
 この言葉を紹介している記事の中で、金メダルをとれなかった伊藤みどりが「日本の皆さんに申し訳ない」と謝ったことが書かれており、とても恥ずかしいと思ったことをつけ加えておく。

エキシビションでゴールドメダリスト、として紹介された荒川選手の美しかったこと。私はスルヤ・ボナリーが金メダリストになれないスケート界に対して長く疑問があり、今ひとつフィギュアに熱心になれなかった。だが、いきなり革命を起こさなくても、あるがままを楽しみ、自分の信念に忠実でい続ければよかったのだ。荒川選手が教えてくれたように思う。おめでとう!
by slycat | 2006-02-25 20:46 | その他スポーツ
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