ミステリ・テニス・ハムスター・モルモットについてあれこれと……
by slycat
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カテゴリ:文楽( 18 )

文雀さん、有難うございました

吉田文雀さんが亡くなった。尊敬する人、愛する人との別れは、長く生きていればいつかはやってくるとはわかっていながら、悲しくて堪らない。

文雀さんが舞台に現れると、途端に空気が引き締まり、清々しくそれでいて柔らかい風が吹く。彼が操る人形は肌に艶を帯び、ものの哀れを語り出す。

文雀さんが人形を遣った作品で大好きだったのは、やはり『葛の葉』と『摂州合邦辻』だろうか。人の姿を借りた狐が、愛する我が子を残して去る決意をしながら去り難く、思いのたけを語る場面の素晴らしさ。流れる涙を止めることすらできなかった。また、玉手御前が実家を訪ねる合邦庵室の段、文雀さんは、玉手御前は本当に俊徳丸が好きなのだ、というスタンスで人形を遣った。お家を守るため、だけではない、悲しい報われない恋心と死の覚悟。文雀さん亡き後、誰がこれを表現できるのだろうか。

文雀さんは、人形を遣うのが大好きだった、幸せだった、と仰り引退なさったが、その「大好き」のお気持ちこそが私たちの心を摑み、自然に物語の中に導いてくださったのだと思う。さようなら、決して忘れません。
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by slycat | 2016-08-22 19:54 | 文楽

第164回文楽公演:清十郎さん、おめでとうございます

9月13日(土)、文楽9月公演第1部に行ってきた。だいぶ時間が経ってしまいボケもいいところだが、書いておかないと忘れるので……。

近頃河原の達引
〜四条河原の段〜
今回も最前列の席だった。三宅坂の劇場は字幕が左右にあるのだが、全然見えない。パンフレットに挟まれているミニ床本の文字を追おうとしたが、照明が暗くてこれも無駄。耳を澄ませて語りに集中するしかない。
 「予習」を全然していなかったのでどんなお話なのかもわからない。だが、見るからに悪そうな奴(亀山藩勘定役横渕官左衛門)が出てきて、主人公のひとりらしき井筒屋伝兵衛を待ち伏せの上殺そうとしているらしい。

駕篭がやってくる。もちろん伝兵衛が乗っているので、官左衛門が邪魔をする。伝兵衛は官左衛門が大事な茶入れ(亀山藩の若君が将軍家に献上しようとしている)を持っているので、返してくれるなら何でも堪える、と官左衛門がバシバシ打ち据えるのを我慢する。
 はなから伝兵衛を殺すつもりなのに、面白がって伝兵衛を叩く官左衛門は唖然とするほどイヤな奴で、実にわかりやすい展開である。しかし堪えていた伝兵衛も、官左衛門が茶入れを投げ捨てて砕いてしまうに至って堪忍袋の緒が切れる。官左衛門の刀を奪って逆に斬り殺してしまう伝兵衛。
 伝兵衛の自害を止めたのは、彼に恩のある久八。大事な茶入れが壊れてしまった上に人を殺めたと気も狂わんばかりの伝兵衛を前に、妙に落ち着いている。実は官左衛門が壊した茶入れは偽物で、本物はちゃんと別にあるという。そして罪は自分が被るから、と伝兵衛を逃がす。

〜堀川猿廻しの段〜
実家に帰った遊女おしゅん(伝兵衛の恋人)には盲目の母と猿廻しを生業とする兄がいる。久八が伝兵衛の罪を被ったはずだったが、すでに伝兵衛が官左衛門殺しの犯人であるとバレており、母と兄はおしゅんのことが心配でたまらない。おしゅんも伝兵衛の身を案じながら、母と兄の気持ちが痛いほどわかっている。3人が互いを思いやる気持ちが交差する。
 妹(娘)を助けたい一心で退き状を書けという兄と母。おしゅんは母が盲目であり兄が無筆であることを「利用して」退き状の代わりに遺書を書く。伝兵衛の登場でそれが判明し、妹(娘)の決意が固いことを察して、母と兄はおしゅんと伝兵衛の旅立ちを猿廻しで祝ってやることにする……。

盲目の母のためにおしゅんが煙管に火をつけてやるシーンは、現代であれば「年寄りに煙草を喫わせるの?」と問題視されそうだが、いかにも「プロ」の女性らしく手際がよく、なおかつ母をいたわる気持ちが溢れていて美しい。
 しかしこの段の場をさらうのは、おしゅんの兄、与次郎である。コミカルな仕草で観客を笑わせる一方、妹想いの優しさで泣かせる。妹が退き状を書いたのに安心し、休むように促すシーン、妹にはふかふかの布団に高枕、その上自らの丹前(?)まで掛けてやるが、自分は煎餅布団にくるまって寝る。
 伝兵衛には伝兵衛の事情があるのだが、この母とこの兄を見てしまうと、おしゅんは悪い男に引っかかったものだなぁ、運が悪いなぁと思ってしまうのだった。

五世 豊松清十郎 襲名披露 口上
今回の公演、何と言っても清十郎さんの襲名がメインなのだった。ロビーはいつもにも増して賑やかであり、特別に華やかな雰囲気に溢れていた(住大夫さんの奥様もいらっしゃっていた。ロビーでお顔を見かけたのは初めて)。
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歌舞伎などを見慣れている人たちには珍しくないのだろうが、「襲名」という大事なときに立ち会うのが初めての私には、何もかもが目新しく厳粛に感じた。
 清十郎さんを中心に両側を重鎮が固め、口上が述べられる。清十郎さんご自身はひと言も語らない。文字久大夫さんが「司会」のような役割を務め、住大夫さん、寛治さん、蓑助さん、勘十郎さんが清十郎さんの襲名を祝う。
 「恐悦至極に存じ上げ奉ります」……うわぁ、時代劇みた〜い、などと内心はしゃいでしまった(なぜか寛治さん、勘十郎さんは「普通」の丁寧語だったが)。家に帰って夫に報告したら「襲名なんだから当たり前だろ」と言われてしまったのだが、伝統と格式をベースにしたこの儀式に、いたく感じ入った。大事なことがいろいろとないがしろにされがちな現代において、かたくななまでにルールを重んじる人たちがいること、それ自体が清々しいのだった。いい経験をさせていただいた。

本朝廿四孝
清十郎さんの襲名に合わせた、華やかな演出を楽しめる演目。人形を遣う方々も超豪華なメンバーである。

〜十種香の段〜
長尾謙信の館。中央に花作りの蓑作(実は武田勝頼)を配して、左右に夫の死を悲しむ女2人、という舞台構成が凄い。
 亡くなった許婚の勝頼にそっくり、と蓑作に駆け寄る八重垣姫(謙信の娘)。毎日得姿を拝み、恋しさが募ったというのがいじらしい。最初は人違いと突っぱねていた勝頼も、ついには正体を明かす。しかしこれを盗み見ていた謙信が、勝頼に塩尻に向かうよう命じ、刺客を差し向ける。

〜奥庭狐火の段〜
勝頼に追っ手が迫っていることを何とか伝えたい八重垣姫だが、目の前には諏訪湖。どうすることもできない。諏訪明神所縁の兜を手にすると、狐の霊力が宿る。八重垣姫は狐たちに護られ、勝頼の許へ……。

奥庭狐火の段では、まず狐の人形(縫いぐるみ)を操る清十郎さんが白い衣装(肩衣には狐火の模様)で登場。諏訪明神の兜のところへ消えていくと、早変わりで別の色の衣装を身にまとい(左遣いは勘十郎さん、足遣いは……申し訳ない、お名前がわかりません。たぶん吉田幸助さん)八重垣姫として登場。最後に再び衣装が変わり、狐が4体いっせいに出てきてエンディング。
 なぜか、この狐4匹が出てくるところでバッと涙が出てしまった。恋人を案じる一途な思いが頂点に達した瞬間だからだと思うのだが、何というタイミング。冷静に考えれば縫いぐるみなんだけどなぁ。そんなことは全く思わず、ただただ感動した。

11月の大阪公演でもこの本朝廿四孝が披露される。今回、一番前の席だったために八重垣姫が兜を手に水面に写る姿を見てびっくり、というところが確認できなかったので、次回はもう少し後ろの席だといいなぁと思う(しかし残念ながら席は選べない……)。
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by slycat | 2008-09-24 23:41 | 文楽

夏休み文楽特別公演:その2

夏風邪で苦しんでいるうちに2週間以上経ってしまったが、「その1」を書いたからには「その2」を書かないわけにはいかない。

大阪2日目(8月2日)、息子は落語を聴きたいというので南森町まで送って行き、昼食をとった後別れた。私のほうは日本橋で文楽を聴くのである。
 文楽劇場に着くと会場は満員。近松だし、映画化されたこともある有名な作品だし、何より土曜日だし、当たり前か。チケットがとれたのは幸運だった。

鑓の権三重帷子
〜浜の宮馬場の段〜
雲州松江候の上小姓、笹野権三は鑓の名手でしかも美男。ある日馬場で遠乗りをしているところへ恋人のお雪が乳母とともに現れ、いつ祝言をあげてくれるのかと迫る。ちゃんとした媒酌人がいればいつでも、と答える権三。お雪は権三に手縫いの帯を渡す。そこへお雪の兄、川側伴之丞が現れ、お雪は姿を隠す。
 この伴之丞がイヤな奴。いろいろ言いがかりをつけた挙げ句に馬で競争しようというので、いやいや応じると、落馬して大怪我をする。
 そんなところへ今度は権三と伴之丞が師事している茶の湯の師匠、浅香市之進の舅、岩木忠太兵衛がやってきて、若君ご祝言に伴い国元でも茶の湯の会を行うから、留守中の市之進に代わって茶の湯を執り行うように、と言う。

伴之丞がいかにも悪そうで、こんな奴の妹と結婚したら絶対不幸になる、と思うのだが、よりによって……。この伴之丞、「馬から落馬した」などと言うのが笑える。あんまりオツムのほうもよろしくないようだ。

〜浅香市之進留守宅の段〜
茶の湯の師匠、市之進の留守宅。妻のおさゐは37歳という年齢でいまだ若々しく美しい。おさゐは長女の髪型が気に入らないから直してやろう、と娘の髪を梳いてやりながら、こんなによい娘は並の男には嫁がせたくない、できれば笹野権三のような美男でしかも人格に優れたものに嫁がせたいと言う。娘のほうは、権三は年が離れているから嫌、と言うのだが、なぜか母親は自分も年の差結婚だったとえらく熱心に勧める。
 そんな折も折、噂の主の権三が訪ねてきて、今回茶の湯を執り行わなければならないので「真の台子」を伝授してくれないかと頼む。おさゐは真の台子は一子相伝だから無理だが、娘の婿になるのであれば子となるわけだから伝授してやろうともちかける。
 そこへ間の悪いことにお雪の乳母が訪ねてきたので、おさゐは夜、数奇屋で会う約束をして権三を帰す。実は以前から伴之丞がおさゐに言い寄っており、彼の家の者だというのでおさゐは会いたくない。乳母はお雪と権三の祝言にあたって媒酌人を頼みたいと言っている。先ほど、娘の婿になることを承知したというのに、実はお雪という恋人がいたことがわかり、おさゐの心中は穏やかではない。

〜数寄屋の段〜
約束通り、権三は夜、浅香家の数寄屋にやって来る。あらぶる心を鎮め、おさゐは権三に真の台子を伝授する。するとそこへ、伴之丞が忍んで来る。おさゐに横恋慕している彼は、この機会におさゐと伝授の両方を手に入れようと企んだのだった。しかし、先に権三が来ているのに驚く伴之丞。権三は権三で、急に蛙の声が止んだのを怪しみ、誰か来たのではと立ち上がると、それまで内心の怒りを抑えていたおさゐが突然いきり立ち、お雪が訪ねて来たのだろう、その帯は何だ、と権三のしていた帯を庭に投げ捨てて、自分の帯をほどいて「これを締めろ」と権三に迫る。権三はさすがに腹を立て「私は女物の帯などしたことはない」とおさゐの帯を同様に庭に投げる。人間、どんなときでも腹を立てるものじゃない。これが運の尽きで、伴之丞に帯を拾われてしまい、2人が不義を行っていた、と叫んで逃げ去って行く。こうなっては申し開きができない、と切腹しようとする権三。しかし、せめて夫市之進を立てて妻敵として伐たれてやってくれ、とおさゐに頼まれ、2人は屋敷を後にする。

映画化の際にどういう演出になっていたのか、観ていないのでわからないが、娘の婿になる男に恋人がいたことを嫉妬する、というのは難しい演技だったのではないか。正直言って、私にはよく理解できない(おさゐより年上なんだけれど……)。それほどまでに娘を愛しているということなのだが、権三はいわばアイドルなのかもしれない、おさゐ自身にも恋心とはいかないまでも、何か執着心があったのかな。相手の恋人が縫った帯を投げ捨てて、自分の帯を締めてみろ、と言う逆上ぶりが凄い。
 休憩時間に、この「帯事件」について話している人たちがいて、男性のほうが「帯をほどいたら着物がバラバラになっちゃうんじゃないの」と言うと、女性が「帯はいわば飾りで、ちゃんと別の紐で止めてあるから大丈夫」などと答えていたのが面白かった。

〜岩木忠太兵衛屋敷の段〜
市之進とおさゐの娘たち2人は舅の忠太兵衛に預けられ、息子虎次郎は市之進の弟子に預けられている。おさゐの弟岩木甚平が現れ、不義の2人は見つからなかったが伴之丞の首は討ったと報告。甚平と市之進で権三たちを討つため出かけようとすると、虎次郎が現れ自分も一緒に行くと言う。虎次郎には留守宅を守れと言いつけ、市之進と甚平は出かけて行く。

子供たちが、お母さんに罪はないから連れて帰って、権三だけ殺して、と頼むのが哀れである。そりゃあそうだろう。年端もいかない子供たちに不義の何のとわかるわけがない。お母さんにしても、実際は何も悪いことをしていない。子供を愛するあまり、うっかり罠にハマってしまった気の毒な人である。このあたり涙を誘われる。

〜伏見京橋妻敵討の段〜
盆踊りの夜、若い男女が踊りを楽しんでいる。そういえば『桂川連理柵』での心中場面もこんな感じだった。これから死ななければならない運命の者たちと、今を生きている人たちの対比。ついに市之進はおさゐ・権三と出会い、おさゐは片手討ちにされ、権三も潔く討たれる。白装束に身を固めた2人の遺体が折り重なる。

おさゐはあまり多くを語らないうちに斬られてしまったが、市之進は最後まで妻が不義を冒したと思っていたのだろうか、それとも何らかの不幸な偶然からこうなったとわかっていたのだろうか、その辺が非常に気になった終わり方だった。権三も馬鹿だなぁ、お雪とさっさと一緒になっていれば、あるいは最初から伴之丞なんかの妹と付き合ったりしなければ、でなければいくら師匠の妻に言われたからといって、女性1人しかいないところへ夜、のこのこと出かけたりしなければ……。

お話にはついていけないところがあるものの、文雀さん、蓑助さんは相変わらず見事に人形を遣っていらっしゃって、非常に満足した。夏の公演ということで、太夫さんたちも人形遣いの方々も夏物の着物をお召しになり、これがとても爽やかだった。いいなぁ、東京でも夏公演やって欲しい。
 会場の熱気もとても好ましい。長年のファンが文楽初体験の人にいろいろと教えてあげている場面などがあちらこちらで見られた。さすがに本場だな、と改めて思った。

息子のほうは無事ホテルに帰り着いており、合流してなんばで夕食をとった。息子は息子で楽しんだようである。それぞれ好きなものをそれぞれに楽しむのも悪くない。最後に、hanbusさんタケゾウさんに教えていただいた「丸福珈琲店」でコーヒーを飲み、ホテルに戻った。今回も収穫の多い大阪旅行となった。
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by slycat | 2008-08-18 00:18 | 文楽

夏休み文楽特別公演:その1

8月1〜3日、今年も真夏の大阪へ行ってきた。息子に「今度の文楽は五人伐だけど行く?」と訊いたら「行く、行く」と言うので再び子連れ旅となった。さすがに来年はもう一緒には行けないだろう、受験もあるし、親と2人だなんていやがるに決まっている。
 今回は初日の夜に2人で文楽に行き、2日目は息子がひとりで繁昌亭に行きたいと言うので(私は文楽の第2部を観るから)別行動。ちょっと心配だが、もう高校生なのだからいいだろう。

昼頃伊丹空港に着き、リムジンバスで上本町へ。ホテルに荷物を預けて昼食をとり、少し街をブラブラしてからチェックイン。我が家とは似ても似つかぬきれいな部屋で休み、シャワーを浴びてきれいになってから文楽劇場へと向かう。

この日は開演前に「社会人のためのうぃーくえんど文楽」(息子が「俺、社会人じゃねーよ」とつぶやいた)などという講座があり、舞台に相子大夫が出てきて文楽の発祥などについて解説してくれた。ふだん太夫さんたちの肉声を聞くことがあまりないので、何となく変な感じだったが面白かった。

国言詢音頭
昨年は『伊勢音頭恋寝刃』の十人斬りを見せ、今年は五人伐。高校生といえども子供にこんなのばかり見せていいんだろうかとも思ったが、せっかく我が子が文楽の面白さを知ったのだからもう少し見せたい。心中物は退屈、もうイヤだ、とハッキリ言われているので、夏らしく背筋が寒くなる演目で興味をつなげてやろうと思う。

〜大川の段〜
曾根崎新地の女郎菊野は、大川岸で仲居のお岸に絵屋の仁三郎宛の恋文を託して茶屋へ向かう。お岸は薩摩藩士八柴初右衛門の部下伊平太に出くわし、軽口を叩いたのを脅されたため、慌てて逃げる際に菊野が書いた手紙を落としてしまう。
 この手紙の中身が問題だった。初右衛門は菊野に惚れたがために大金を使い、それでも足りずに藩の金まで使い込んでいる。それほど尽くしているのに「あの様な阿呆は、やがて腹切るか、首切られるであろ」などと書かれている。
 早く主を帰国させたい伊平太は、初右衛門の目を覚ますつもりで手紙を見せたのだがこれが余計なお世話。しかも折悪しく菊野が仁三郎とともに舟遊びをしているところを目撃してしまう。さらに菊野と仁三郎は、遊びの最中にも初右衛門の悪口を言いたい放題。初右衛門の胸にある決意が生まれる。

住大夫さんが『文楽のこころを語る』で仰っているとおり、「こないにぼろくそ言われて、辱められたら、だれかて怒りまっせ」。最初から誰かが5人殺される、とわかっているのだが、この2人(菊野と仁三郎)が殺されても同情はしないな、と思ってしまうほど。

〜五人伐の段〜
初右衛門が茶屋に現れ、帰国するからと店の者たちに土産を渡す。菊野と仁三郎にも文箱を渡して奥座敷へ。仁三郎が文箱を開けてみると、何と菊野が書いた手紙が。初右衛門に対する悪口雑言を読み、これはもう心中するしかない、と覚悟を決めるが、当の初右衛門が出てきて2人を許して去って行ったのでひと安心。酒を飲んだ仁三郎は2階へ上がって寝てしまう。
 そこへ仁三郎の許嫁、おみすが訪ねてくる。菊野は気を利かせておみすを自分の代わりに2階へと向かわせ、自分はひとり1階で眠る。と、そこへ初右衛門がやってくる。菊野と仁三郎を許したと見せかけ、最初から斬り殺すつもりだったのだ。

可愛さ余って憎さ百倍、というところなのだろうが、いったん許すと言っておきながら夜中に戻ってくるあたり、う〜んしつこい男だ。始めは菊野の悪口があんまり無茶苦茶なので初右衛門に対して同情する気持ちもあったのだが、こりゃぁ嫌われるはずである。
 菊野も、いくら手紙とはいえ他人の悪口をあそこまでクドクド書けるものかねぇ、嫌な女だなぁと思っていたのだが、初右衛門に枕を投げつけたりするあたりは天晴れ。摑まって首を締め上げられ、仁三郎の居所を吐け、と脅されても「知らぬ」と言い通したあたりもなかなか立派なものである。変なことを言うようだが見直した。

感心している間もなく、ここから始まる惨劇の凄まじさ。胡弓の音色が恐ろしさを倍増させる。「髻(たぶさ)摑んで掻切る首、血に染む丹花の唇をねぶり廻して念晴らし」……絶句するしかない。何も知らず寝ぼけ眼で出てきた仲居は真っ二つ、太鼓持ちたちも切られてしまう。
 私たちは最前列に座っていたのだが、誰かが斬られるたびに後ろの席から「ハッ」と息を呑むのが聞こえた。血なまぐさい場面を呆然と見つめていると訳がわからなくなってくるが、人としてのまっとうな反応が聞こえてくると、見失いそうな善悪の区別が収まるべきところへ戻ってくる気がした。こういう演目は劇場でこそ体験すべきである。独り暗い部屋の中、DVDなんかで観ないほうがいい。

だけど、一番罪が重そうな仁三郎は助かるんだなぁ。一緒に観た息子はこれが納得できないと言うが、これも菊野のおかげ。運命の皮肉さが感慨深い。
 パンフレットに「梨割り」の人形が出てくると書かれていたので、初めて見る首のからくりにちょっと期待したが、これは意外にあっけなかった。モノクロの写真で見たときは物凄く怖いと思ったのだけれど……。

しかしこのお芝居で最も恐ろしかったのは、斬りまくった初右衛門が茶屋の外に出てからだった。三味線がテンポのよい曲に変わる。防火用水のところで立ち止まる初右衛門。刀を、刀を握っていた両の手を、殺した菊野の臓物に突っ込んだために真っ赤に染まった足を、ゆっくり、ゆっくりと洗う初右衛門。底冷えのする恐ろしさだった。
 洗い終わったところへザアァァと通り雨が。本水というそうで、文字通り本物の水が降ってくる。凄惨な場面で縮み上がった心臓をパッと解放するような雨音だ。
 悠々と傘を指して佇む初右衛門。玉女さん渾身の遣いっぷりにノックアウトされた。住大夫さんの語りがこれまた凄まじく、「ハ、ハ、ハ、ハ……」の笑いは圧巻だった。

見終わった息子が「玉女さん、やるじゃん!」などと生意気なコメント。なぜか御髪が真っ黒になっていたが(染めたのか?)、それはともかく実に素晴らしかった。腰が据わっていたというか、安心感があったというか、お見事でありました。
 音楽も印象的だった。怖い場面に賑やかな感じの曲を合わせる感覚が鋭いと思う。もう1週間も経つのに、いまだに耳に残っており、気がつくとハミングしてしまう。住大夫さんが「作品としては二流」とおっしゃっていたが、逆にいろいろな要素で楽しめる作品だったなと思った。

観終わった後は4月に1人で食べに行った天ぷら屋さんを再び訪れ夕食をとった。珍しいものをいろいろいただいて、大満足のうちに大阪第1夜は更けていったのだった。
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by slycat | 2008-08-08 00:21 | 文楽

不可思議なり〜文楽5月公演〜

文楽5月公演(国立劇場小劇場)
第2部 心中宵庚申、狐と笛吹き


昔、まだコンピュータゲームといえば「ファミコン」だった頃。近所の商店街にあった小さなゲーム店(今はもうない)で品薄だった『ドラゴンクエストIV』を見つけ、喜んで買おうとしたら、ドラクエだけでは売ってもらえないことがわかった。もう1本ソフトを買うのを条件に売ってくれるという。しかし選択肢は少ない。『寺尾のどすこい大相撲』(だったかなぁ、北尾のゲームだったような気もする)だとか、買いたくないのばっかり。
 ドラクエIIIからゲームを始めた私は、その時点でまだドラクエIIをプレーしていなかったので、お店の人と交渉し、ドラクエIIとIVの2本セットということでようやく売ってもらった(結果的にはIIのほうが面白かったな……)。いま思い出しても、この「抱き合わせ商法」には疑問を感じている。買うほうが悪いのかもしれないけれど。

今回の文楽公演、何だか「抱き合わせ」を髣髴とさせるような演目の組み合わせと言ったら失礼だが、観終わって少々拍子抜けしたことは事実である。

心中宵庚申
言わずと知れた人気作品。先日テレビで観た『闘う三味線〜人間国宝に挑む』でも、冒頭の住大夫さん紹介のシーンで、上田村の段が使われていた。

〜上田村の段〜
いきなり住大夫さん登場。先月大阪で拝聴した際には、少々お疲れか、と心配もしたのだが、今回は伸び伸びとしたお声を存分に聴かせていただくことができて感激である。しかも人形を遣う方々はヴェテラン揃いで超豪華な顔触れ。これを見逃すいわれはないでしょう。

〜上田村の段〜
京都山城の大百姓、島田平右衛門には2人の娘がいる。長女おかるは婿をとって実家を守り、次女の千代は大阪の八百屋に嫁入りしている。千代は最初の結婚を失敗、2度目は夫に先立たれていたが、今度は姑に嫌われ、夫・半兵衛が留守の間に無理矢理離縁されて実家に戻されてしまった。
 バツ3くらい今の世ならば痛くも痒くもないところだが、この時代には一大事。妹が離縁されたと知ってカッとなった姉のおかるが放つ皮肉は強烈だ。しかし、妹・千代の嘆くさまを見て、すぐさま妹を哀れと思う、そんな瞬時の心の動きが違和感なく伝わってくる。
 そして何も知らずに手土産(わさび漬けかなぁ)持って訪ねてくる千代の夫・半兵衛の無邪気な優男ぶり、冷たくあしらうおかると、これまた強烈に悪口雑言を浴びせる舅・平右衛門の堂々たるさま、さまざまな思いを抱えた人物たちの描き分けを楽しむ。舞台の人形を見ようか、それとも住大夫さんの豊かな表情を見ようか、大いに悩みどころだった(今回は床に近い席だったので特に悩みが増した)。

この半兵衛という人は武士の出であるため、妻が義母の勝手で離縁されたと知ると、責任をとるべく自害しようとするのだが、潔いというよりは子供っぽい。そこにすかさず「止めるな娘、存分に自害召され。見物せん」と言い放つ平右衛門の対応はさすがに大人である。
 先に「よう戻りやつた。父様お聞きなされたらお悦びなされうぞ」とおかるが妹を叱りつける言い方にも驚いたのだが、このような逆説的な言いようは血筋だろうか、なんてことを思う。

平右衛門の言葉に、自分の浅慮に気づいた半兵衛は千代を連れて大阪へ戻ることにする。平右衛門はおかるに用意させて半兵衛・千代と水盃を交わし、さらに別れの門火を焚くようにおかるに指示。
 このときおかるは「エヽ、忌々しい」と思うのだが、この語の意味がわからず辞書を引いたら「縁起が悪い」。もっと真面目に古文を勉強しておくべきだった……。この意味深な別れの儀式がなぜ行われたのか、後になって平右衛門の「読み」の力に恐れ入ることになるのである。

余談。千代が平右衛門の希望で『平家物語』を読み聴かせるシーンで「『網島の心中』もござんする」と千代が言うのは、当時の観客に向けた「楽屋オチ」サービスだったのかなぁ、と思ったのだがどうなのだろう。

〜八百屋の段〜
ここで登場する半兵衛の義母は、文楽の中の「イヤなババァ」ワースト1じゃないか、と思うくらいいや〜なお婆さんである。嶋大夫さんが語ると、さらにその嫌味が倍増する。
 『伊勢音頭恋寝刃』の万野は言ってみれば金に汚いだけだし、『桂川連理柵』のおとせは自分の子を跡継ぎにしたいという親心もあっての意地悪だったが、八百屋の義母が半兵衛、千代をいじめる理由はわかりづらい。
 もちろん現代においても嫁姑問題は起こりうるので、「嫁」というだけで憎いのかもしれず、案外深い意味などないのかもしれない。それにしてもね……。

千代と一緒に大阪に戻ったものの、家に入れるわけにもいかず親類に預けていた半兵衛、しかしそんなことはとっくに義母にバレていた。やむなく半兵衛は、義母が嫁を追い出したとあっては世間体が悪い、自分がきっと離縁するからと約束する。
 義母に戻って来いと言われて大喜びで帰ってくる千代、早く主婦としての役目を果たしたい。蚊帳を出さなければ、まぁまだ炬燵が出しっ放しだわ、漬け物を確かめなくちゃ、といそいそとする姿に半兵衛は「エヽ、可哀や。利発なやうでも女心」と涙ぐみつつ事情を明かす。
 義母が帰ってきて、非常にわざとらしく半兵衛に離縁を促す。離縁しなければ死ぬと脅かされている半兵衛は義母に従うしかない。しかし上田村での約束も果たさなければならない。2人にはもはや死ぬしか道は残されていなかった……。

〜道行思ひの短夜〜
宵庚申の夜、若い男女が楽し気に通り過ぎる。片や半兵衛と千代は、死に装束に身を包み、死に場所を探す。
 深紅の毛氈を敷き、念仏を唱える千代だが、「待つてたべ、待たしやんせ」。「待てとは未練な」と叱咤する半兵衛に、「可哀やお腹に五月の、男か女か知らねども、この子の回向してやりたい」。陽の目を見せることもなく死なせてしまう我が子が哀れと言う千代が、これまた哀れで涙を誘う。昔の数え方はわからないが、妊娠5ヵ月ともなれば胎動を感じる頃なのに……。
 どこか田舎に2人で逃げて、畑を耕しながら暮らす道はなかったのか、と現代の自分は考えてしまうが、半兵衛が元武士であるという設定がこの悲劇を生むのだろうな、とも思う。そしてあの立派な父に育てられた千代も、人をないがしろにしてまでは幸せを選んだりはできないのだろう。

毛氈を敷いた上での心中、というのは鮮烈で、かつ残酷だ。『桂川連理柵』ではあまり語られなかったが(母親が14歳では仕方がないか……)、死によってお腹の子の命まで無惨に散る理不尽さが、長く記憶に残りそうである。

狐と笛吹き
チケットを取ってくれた友人が、「あらかじめ言っておいたほうがいいと思うんだけれど、次のは文楽じゃなくて文楽もどきですから」と言う。へぇ、そうなんだと応えつつ予想がつかないので、とにかく観てみるしかない。
 お話は『今昔物語』を基に書かれたもので、昭和33年初演だという。先に歌舞伎で上演されているらしいが、歌舞伎版とは結末が違うのだとか。人間と狐の娘の、悲しい恋の物語である。

〜その一 春のおぼろ〜
〜その二 夏の月夜〜
〜その三 秋の落葉〜
しかし、う〜ん……。物凄く違和感があるのは、言葉が中途半端に現代語になっているからか。それとも床に当てられた照明のためか。うまく説明できないのがもどかしいが、四季の移り変わりとともに淡々と進んでいく場面のどこへも気持ちを入れることができない。
 舞台はとてもきれいである。衣装も凝っていて素晴らしい。でも何か違うんだよなぁ。鶴澤清治さんの素晴らしい三味線と清志郎さんのお琴による盛り上がりは物凄かったが、コンサートに来たわけじゃないし……。

〜その四 冬の寒灯〜
ここから人形が出遣いとなる。人間と狐が交わると死を招く、という言い伝えを守り、清らかな関係を続けている主人公・春方とともね。ともねの母が近江から娘を迎えにやってくる。春方に受けた恩を返すために娘を寄越した母だったが、2人が危ない崖に立っていることを危惧して訪ねてきたのだった。
 春方が楽人仲間と一緒に泥酔して帰ってくる。笛の師匠に「最近、笛の音が濁っている」と叱られたのだった。ともねは春方の身を案じる一心で春方を拒むが春方には通じない。ともねは母に連れられ家を出る。

酔った春方が座敷に上がるところで、玉女さんが何かにけつまづいてよろけてしまった。千秋楽なんだけどなぁ。決して玉女さんのことが嫌いなわけではないのだが、なぜか彼を見ているとハラハラする。
 「その三」で、
「私たちは人間と狐ではない。ともねと春方ではないか。うまれた世界は違っていても、私は一生お前を離さない」
「私たちは一生清らかな二人でいよう。男と女ではなく兄と妹として二人でいよう、私にはそれができる、きっとできる。安心おし」
ときっぱり宣言したにもかかわらず、春方のこの体たらく。だらしないしみっともない。
 おまけに、春方を語る文字久大夫さんが身を乗り出さんばかりの大熱演で、これがかえって恥ずかしい。半ば唖然としているところへ、極めつけが、ともねの「反撃」。これには誰もが堪え切れず、ついに会場がどっと沸いてしまった(もちろん、笑ったのである)。

〜その五 雪の深山〜
〜その六 雪の湖〜
母に連れられ重い足取りのともね。琵琶湖が見えてきて、母はこれでひと安心と思うが、ともねの心は晴れない。そこへ春方がともねを追いかけてくる。2人はお互いにもう離れない、と誓い、かくなるうえは湖に身を投げて、あの世で夫婦になろうと願う。

最後の場面、まさかね、出てくるな、出てくるなよ〜と念じていたのだが、やっぱり母が娘を追って出てきてしまった。さらなるダメ押し、ともねが母に向かって手を振り別れを惜しむ。わーもう、何とかして欲しい。
 歌舞伎版では掟を破ったともねの亡骸を抱いた春方が湖に身を沈める、という結末だったそうだが、そちらのほうがずっとよいのではないか。どうしてこうなってしまうのか、何だかよくわからないのである。

会場を出て地下鉄の駅まで友人と歩きながら、あれこれと話した。友人曰く「結局肉欲かよ……」。もっともだ。もちろん愛がきれいごとだとは思わない、だけどあまりにもストレートで含みのない表現に、どう反応してよいのかわからない。
 それでも演じる太夫さん、人形遣いの方々、演奏の方々は皆大真面目で務めていらっしゃるのだから、笑ってはいけない、と思ったのだが、笑わずにいることができなかった。変な組み合わせの公演だった。

文楽の新作を作るというのは難しいことなんだな、ということがわかっただけでも収穫なのかもしれない。それこそ狐につままれたような気分で帰路を急いだのである。
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by slycat | 2008-05-27 00:09 | 文楽

文楽4月公演:その2

4月27日(日)は4月公演千秋楽。前の晩よく眠れたので体調は万全である。ホテルで朝食をとりチェックアウトの後、文楽劇場へ向かう。都会の真ん中とはいえ朝の空気は清々しい。
 今回初めて、劇場の展示室に入ってみた。手にとってもよい、ということなので三味線や人形遣いの方が履く下駄を触ってみる。三味線やバチが思っていたよりずっと重く、反対に下駄が軽いのに驚いた。

日吉丸稚桜
〜駒木山城中の段〜
今回の座席は前から2列目。字幕を読むには辛い席なので、手許に床本を開いておいたが、この演目も次から次へと事件が起こるので、手許なんか見る暇はない。

舞台は駒木山城。父親と夫が不仲になったためにこの城で暮らす萬代姫を救うため城に忍び込んだ男を藤吉の家臣・茂助が捕らえてみれば、相手は義理の父、鍛冶屋の五郎助。しかも藤吉とは旧知であるという。五郎助は藤吉に話があるからと言って、場に現れた幼い息子を連れ、奥の間へと入っていく。

五郎助が昔自分の恩人を斬ったと知り、茂助は妻のお政を離縁すると告げる。驚き、悲嘆に暮れるお政は、刀で喉を突いて自害を図る。隣の部屋からお政の母(つまり五郎助の妻)がまろび出て「娘が自害した」と嘆き悲しむが、五郎助は平然と、婿の茂助に敵・斎藤方の本拠地への道を教える。

実は五郎助は斎藤家の家臣、加藤忠左衛門清忠だった。五郎助は、お政は勘当したから妻として看取ってくれと茂助に頼むが、突然娘の首を斬る。さらにびっくりの周囲をよそに、娘は主君の娘、萬代姫の身替わりとなったのだと言い放ち、主君を裏切ったため影腹を切っていたことを明らかにする。藤吉は五郎助の忠義心を褒め、息子の竹松を召し抱えて加藤虎之助正清と命名することを告げる。

竹松が喜んでいるところへ別口の曲者が現れ、五郎助の裏切りを斎藤家に注進せんとする。茂助が取り押さえようとすると、幼い竹松が庭の大石を持ち上げ、曲者に投げつけて早速手柄を立てる。この竹松はおかっぱ頭の可愛らしい人形で、何気なく登場したのに終わりにきて大活躍。場面をさらい、客席は大いに沸いた(この男の子が白金に祀られている清正公なのか)。

しかし何たる濃い内容。やっぱり2日に分けて観ることにしてよかった。休憩が入るが、時間が中途半端なので昼食はとらず、売店を覗いて住大夫さんの写真集(サイン本……)を買った。完全にミーハー・モードである。
 次の演目はさらに力が入りそうなので、カフェインをとってリフレッシュ。再び客席に戻る。

桂川連理柵
〜石部宿屋の段〜
実際に起こった事件を基に書かれたお芝居だそうである。帯屋の主人、長右衛門は遠州からの帰り道、ちょうどお伊勢詣りから帰ってきた隣家・信濃屋の娘、お半と出会い、同じ宿に泊まり、なりゆきからお半と過ちを犯す。お半に言いよっていた信濃屋の丁稚、長吉は、仕返しに長右衛門が遠州の大名から預かった刀をすり替える。

〜六角堂の段〜
帯屋長右衛門の妻、お絹が六角堂の観音様にお百度を踏んでいると、帯屋の儀兵衛が現れ、長右衛門は川東の芸妓に入れあげている上に、信濃屋のお半に手をつけたと言い、お絹に言い寄る。うまくあしらって追い払うと、丁稚の長吉が現れる。お絹は、自分の言うとおりにすればお半との恋をかなえてやると言い、金を渡す。

〜帯屋の段〜
刀がすり替えられたことで窮地に陥った長右衛門が家に戻ると、隠居の後妻、おとせと連れ子の儀兵衛が金の遣い込みを長右衛門になすりつけ、あれこれと言いがかりをつける。しかも儀兵衛がお半が長右衛門に宛てて書いた手紙を読み上げるものだから、ますます長右衛門の立場が悪くなる。しかし、このような事態を予測して長吉を言い含めておいたお絹の機転で救われる。この辺り、嶋大夫さんが大勢いる登場人物たちの個性を見事に語り分け、儀兵衛と長吉のやり取りでは腹を抱えて笑わせていただいた(……しかし長吉よ、結局君は刀をどこへやったんだ?)。
 残念ながら今回、切を語るはずだった綱大夫さんは病気のためお休み。ピンチヒッターは千歳大夫さんだった(「切」が「奥」となるんですね?)。『壺坂観音霊験記』のときは、あまりの大音量に少々引き気味になってしまったのだが、今回の千歳大夫さんはとてもよいと思った(素人が何を偉そうに、なのだが)。
 特にお絹が心情を吐露するところ、しんみりとして胸に響いた。考えてみるまでもなく、このお話では、お絹が一番可哀相である。あれこれと言いたいことは山ほどあるだろうに、夫を思い遣り、「私も女だもの、飽きられないようにするから見捨てないでね」とすがるところがいじらしい。
 しかし、お半も可哀相。妻のある人に14歳で恋をして、あろうことか身重になってしまった彼女は、長右衛門に別れを告げて死にに行く。長右衛門ってそんなにいい男なのか。女2人を不幸にして、ホントにとんでもない奴だな〜と思う。

〜道行朧の桂川〜
お半に追いつき、彼女を背負った長右衛門、そなたは生き永らえてくれ、と諭すものの、お半の決意は固かった。蓑助さんが「ハッ」と声をかけて見せてくれた“うしろ振り”に、まぁ何て格好いいのかしら、と惚れ惚れ。この場面では、運命のいたずら(と言うには長右衛門の罪が大きいと思うけれど)で死ななければならない男女の思いが、ここぞとばかりに美しく表現されていた。
 14歳の少女と中年男の恋……と呼ぶのも微妙な関係。長右衛門って、きっと太宰治みたいな人だったんだろうな、と思う。優しさが仇になるタイプなのだな。深く考えると陰鬱なお芝居なのだが、これが人形のよさ、ドロドロにならず、美しかったという印象ばかりが残った。
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劇場の外で出るとよく晴れており、暑いくらいの陽気である。飛行機は最終便なので時間はたっぷり。ちょうどよい機会なので、生國魂神社を訪れてみる。
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誰もいないかと思ったが、お詣りする人が結構いた。しかも若い人が、きちんと鳥居をくぐる前に深々とお辞儀をして行く。いい年をしてロクに作法も知らない自分が恥ずかしい。ここには浄瑠璃神社もあるので、続いてお詣りしていく。
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ゆっくりとなんば方面に戻り、地下街で洋服を見たりして過ごした後、地上に出ていろいろな商店街を歩く。大阪の商店街って全部アーケードになっているんだろうか。途中、チーズケーキの店に行列ができていたが、不思議なことに同じケーキの2号店の前はガラガラだった。長時間並ぶくらいなら2号店に行けばいいのに。
 また、小学校の校庭で赤テントを見た。いやぁ、唐十郎さん、いまだにテントやってるんですかぁ。新宿の花園神社でも見たことがないのに、大阪で見かけるとは。

5時を回ったので、以前息子と行った重亭のすぐ先にある野菜料理の店に入って昼食兼夕食をとる。ビールを飲みながら白和えやれんこんまんじゅうを食べ、筍ご飯で締めた。同じ大テーブルで食事をしていた女性2人組が深刻な話をしていて、しかも1人が泣き出してしまったのには往生したが、食事はとても美味しい。最初はそんなに飲むつもりがなく小さいグラスで頼んだビール、結局お代わりしてしまった。

思いのほかのんびりしてしまい、リムジンバスの時間が迫ってきたので、夫に頼まれた“豚まん”を買い、慌ててなんば駅前のバス乗り場へ。商店街を歩く人々を縫って歩くのが大変だった。大阪の人って、昔は歩くのが速かったような気がするのだが、このところ何度か大阪を訪れるたびに、みんな歩くの遅いな〜と思う。

伊丹空港に到着。手荷物検査はすんなり通ったが、肝腎の人間のほうは金属反応が出て足止めされた。実は羽田でも引っかかったのだが、ジーンズのベルトがいけないらしい。別に悪いことは何もしていないので、いいんだけど。

次は8月に行くつもりだが、お金とスケジュール、大丈夫かなぁ。東京と大阪の往復にもだんだん馴れてきた。次回の訪問が実現することを願っている。
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by slycat | 2008-05-07 11:37 | 文楽

文楽4月公演:その1

連休前の26、27日を利用して大阪の国立文楽劇場へ行った。文楽鑑賞はもちろん大阪へ行くたびに、何を食べようかなぁ、お土産は何にしようかなぁ、と考えるのも楽しみである。

旅割・ビジネス割で行けば新幹線より安いので、飛行機で伊丹空港へ。家を出るのが遅くなり、焦りまくりながら出発5分前に機内に入る。ANAと乗客の皆さんには多大なご迷惑をおかけしてしまった。ここでお詫びしておきます。

[大阪到着]
文楽公演は16時からなので時間はたっぷりあった。空港からバスで上本町へ。なぜ上本町なのかというと、おいしいケーキ屋さんがあり、そこのショコラ・オ・レ・サレという岩塩を使ったチョコレートを買いたかったから。ふだんはあまり甘いものは食べないのだが、塩が入っているので飲んべえにもOKのチョコレートなのである。これと“柚子七味”チョコレート(これもピリッと辛くて飲んべえ向き)、オレンジをビターチョコレートでくるんだものを買う。東京にも似たような商品を売る店はあるのだろうが、この店のものが好きなのだ。次回はもっと買い溜めしたい。

日本橋へ移動。階段を上ろうとしたら、突然駅員さんが現れ、スーツケースを持ってくれた。思いがけない親切にびっくりするとともに感謝感激。東京ではこんな親切な駅員さんに出会ったことはない。

今回泊まるビジネスホテルに荷物を預けて、心斎橋へ向かう。大丸の地下にある回転寿司の店でお昼をとる。何となく、大阪へ行ったらイタリアンやフレンチじゃなくて和食でしょう!と思う。どこか安く食べられるところはないかなーと探したら、ここが美味しいというので行ってみたわけである。
 回転寿司というけれど、あんまり回っていない。職人さんに声をかけると握ってくれる。うん、確かに美味しい。シャリが小さめだし、ネタは厚くて新鮮な感じ。店に入ったときにはまだ空席があったが、あっという間に満席になった。10貫ほど食べて味噌汁を飲み、お腹はいっぱいである。文楽があるのでビールは我慢した。

外に出て、今度は「銀装」というカステラ屋さんの喫茶室でコーヒーを飲み、息子への土産にカステラとプリンを買う。東京にも支店があるのだけれど、「心斎橋店限定」商品だから、まぁいいか。
 予定ではここからなんばまで徒歩でブラブラするつもりだったのだが、方向音痴の私は、ズンズン逆に歩いて行ってしまった。気がつくと、洋服や靴などを安く売る店が建ち並ぶ通りで、女の人たちがたくさんいた。
 せっかくなので少し店内を覗いたりしてみたが、どちらかといえば派手なデザインが多くて食指が動かない。それでも、最近は通販ばかり利用してお店で洋服を見ることが少なくなっていたので、ウインドウショッピングは久しぶり。息子が一緒だったらこういうことはできないので、結構楽しかった。

ふだんの運動不足がたたって脚が痛くなってきたので、諦めて地下鉄で日本橋に戻る。ホテルにチェックインしてひと休み。値段の割にはきれいな部屋だし、ベッドもセミダブル。前回よりも文楽劇場に近いので、定宿にしてもいいかなぁなどと思う。
 ホテルを出て劇場へ。まっすぐ進めばよいので、どんな方向音痴の人間でも間違いなく行ける。途中、とある店の前に行列ができており、何かと思えば「おはぎ」専門店だった。こんなに並ぶほどの名店がこんなところにあるとは、全く知らなかったが、行列に加わる時間はなし。いずれにせよ生ものだから買うわけにもいかないのでスルーした。

[文楽鑑賞]
文楽劇場に到着。前から8列目、20番という座席で、恰好の位置である。すでに端の席にはお客さんが座っていらっしゃったので、「すみません、すみません」と謝りつつ着席する。

競伊勢物語
〜玉水渕の段〜
物語は明るい雰囲気で始まる。荷物を背負った女たちが歩いてくる。最後に登場する娘・信夫(しのぶ)は新婚早々らしく、みんなにその仲睦まじさをからかわれている。京都からの帰り道らしい。
 信夫の夫、豆四郎が登場、荷物が多いので途中人を頼んで運んできてもらったという。ちょうどそこにあった休み処で休むことにするが、そこで近くにある玉水渕に、紛失している三種の神器の1つ、御鏡が沈んでいるということを聞き、突然京に忘れ物をしたから戻ると言い出す。
 仲間の女たちを先に行かせ、豆四郎と信夫が御鏡を取りに行く相談をしていると、茶店の主人が代官所に引き渡す、と言って出てくる。そこへ出てきた先ほど荷物を運んでくれた男・鉦の鐃八(どらのにょうはち)が主人を殺し(実は死んでいない)、玉水渕へ行くなら明日にしたほうがよいと言う。
 しかし、こんなことを言っておいて実は鉦の鐃八がまんまと御鏡を攫っていく算段。それに気づいた信夫は独り玉水渕へ行き、鐃八の隙をみて御鏡を奪う。

鉦の鐃八が渕で泳ぐシーンでは観客から笑いが起こる。なぜ三種の神器に豆四郎がこだわるのか、そのあたりはよくわからないが、夫を思い決死の覚悟で夜の渕に向かう信夫のいじらしさが伝わる。

〜春日村の段〜
ところ変わってここは信夫たちの家。信夫の母・小よしが、娘たちの帰りを待っている。小よしを遣うのは言わずと知れた文雀さん。相変わらず繊細な動きである。
 豆四郎が帰ってくるが、まだ信夫が帰っていないと知り、浮気でもしているのかと腹を立てる。そこへ鉦の鐃八がやって来て、昨晩信夫ともみ合ったときに千切れた信夫の片袖をネタに強請る。笑い飛ばす豆四郎。

娘のことを心配している小よし。すると今度は、家来を引き連れた立派な人物が現れる。武士は小よしの昔の知り合い、太郎助で、今は元の身分に戻っている紀有常だった。はったい茶を飲みながら昔話をする2人。
 有常が奥の間に休みに行くと、信夫が帰ってくる。とがめる豆四郎。御鏡を渡されて誤解は解けるが、入るのを禁止されている玉水渕に入ったからには、小よしに科が及ばないよう、勘当されなければならない、という話になる。
 親思いの信夫、一所懸命頑張って「悪い子」の振りをするが、何を言っても小よしは娘をいたわるばかり、可愛くて仕方がないと言う。このあたりでまず、泣かされる。
 どうしても「勘当」のひと言を言ってもらえない信夫が嘆いていると、有常が奥の間より現れ、幼い頃にやった娘、信夫を返せと言い出す。信夫はびっくり、小よしも育ての親であることを明かしつつも、大事の娘を今さら返せるものか、と怒る。
 3人が揉めていると、今度は役人たちが鐃八の密告により、玉水渕に立ち入った娘を渡せ、とやって来る。次から次へといろいろなことが起こるものである。娘を罪人にするよりは、と有常の言葉を受け入れ、娘を返す決意をする小よし。

ところが……。有常が娘を返せと言った真意は、豆四郎とともに首を打ち、官位争いに巻き込まれた井筒姫と在原業平の身替わりとして差し出すためだった。すべてを覚悟する若い夫婦。そんなことは全く知らない小よしは、内裏上﨟の美しい姿に装った娘を見て無邪気に喜ぶ。娘に駆け寄ろうとする小よしを有常が「身分違い」と押しとどめ、信夫と小よしの間に衝立を置く。都入りの前にせめて声だけでも聞き納めに、と信夫に琴を弾いてもらうことに。

ここからの展開が凄まじい。もはや今生の別れ、と弾く信夫の琴は、先に夫が切腹して気もそぞろとなり乱れてしまう。何も知らない小よしが訝っていると、信夫の首が落とされる。
 いやぁ〜いくら何でもこれはないでしょう。酷い、酷過ぎる……。血こそつながっていないものの、可愛がって育てた娘のあんまりな最期に小よしは狂乱する。もちろん有常だって実の娘の首を斬らなければならないのだから無念ではあるのだが、やはり親子の絆とは、血のつながりにあらず。幼い子供が言葉を覚え、背が伸びていくのを見守り、熱を出せば看病し、恋をすればうまくいくよう祈り……そんな毎日を積み重ねてきた小よしの気持ちを思うと、観ているほうの胸も張り裂けそうである。住大夫さんの悲痛な語りと文雀さんの遣いっぷりがピタリと合って、鬼気迫る場面でありました。

ここで休憩。とにかく高まった気持ちを鎮めるために喫煙ルームへ向かい、コーヒー片手に一服。ふと横を見たら金田一秀穂さんがいらっしゃったので驚いた。内心の驚きを隠してパンフレットを読むふりをする。

勧進帳
歌舞伎で有名な勧進帳。私は勧進帳というと、つい『幻想水滸伝』のグレミオを思い出してしまう本末顛倒ぶりなのだが、勘十郎さんファンの友人が、今回の公演では一番楽しみにしていると言っていたこともあり、ワクワクしながら観た。
 話は誰もが知っているとおり、源頼朝の手を逃れて陸奥へ向かう義経・弁慶の一行が関所で止められた折、弁慶が機転を働かせて関所を越える、というもの。山伏に扮した弁慶と関所守の問答、義経だとバレそうになったときの弁慶の対応が見どころである。
 今まであまり気にしていなかったのだが、席がよかったせいか、人形遣いの方々の衣装などにも工夫があることに気がついた(今さら……)。お揃いの袴が格好いい。弁慶の人形は、主遣いの桐竹勘十郎さんをはじめ左も足も全部“出遣い”。人形が大きいばかりでなく、迫力があり華やかさが違う。
 心ならずも主君・義経を打ち据えた弁慶が義経に詫びるシーンは、もう少し長長とやるのかなぁと思っていたのだが、意外に短かった。それよりもやはり問答の場面が凄かったと思う。最期はさらに華やかな舞いが披露され、豪華なお芝居に大満足。あぁ、やっぱりはるばる来てよかったなぁと思いながら劇場を後にした。

[夕食など]
公演が終わるのが大体8時半。前回はラーメン屋に行ったのだが、ちょっと味気ない。で、ネットであれこれ探していたら、以前は法善寺横町にあったという天ぷら屋さんが、ホテルのすぐ近くにあることを知り、電話してみたら女一人でも大丈夫、と言ってくれたので予約。その店「天ぷら牧」に向かう。
 地図で見るだけだとわからないのだが、千日前のこのあたり、何と言うか、凄い場所である。いかがわしいと言うか、激しいというか……。東京でいえば浅草に似ているが、それとも少し違うような。とにかく、旅行のお上りさん気分でなければちょっと足を踏み入れないような場所に、店はある。

店に入ってみると、気取った感じは全然なく、居酒屋のような雰囲気。予約してある旨を伝えると、すぐに席に通してくれた。予めコースを頼んでいたので、ビールの後にすぐ前菜が運ばれてくる。お洒落過ぎない感じがいい。
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春なので、タラの芽や蕗の薹、筍などの天ぷらが出てきた。一応塩と天つゆ、濃いめのたれ(?)の3種類で食べることになっているが、ほとんど塩で食べた。
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東京にいてもそれほど高級な店に行くわけではなく、つな八とか船橋屋とか天松とかに行って食べているが、コースの最後に出てくるかき揚げが苦手で、大体かき揚げが出てくる頃には満腹の上、揚げ物に飽きてしまっている。そのため天ぷらが食べたいときにはむしろ蕎麦屋に行くことが多い。
 しかし、ここのお店は料理の組み立てがよく、途中揚げ出しが出てきたりして気が利いていた。最後は筍のお茶漬け。美味しくいただきました。今度は息子を連れて来よう。f0061021_1350488.jpg


ホテルに戻って翌日の予定など考えているとあっという間に11時過ぎ。ヨン様のドラマを見て、早々に眠った。
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by slycat | 2008-05-05 14:02 | 文楽

えらい商売や

NHKハイビジョン特集『闘う三味線 人間国宝に挑む 文楽 一期一会の舞台』
(2007年6月24日の番組、再放送)

昨日一緒に文楽2月公演を観に行った友人から、今日再放送があるらしい、とメールで教えてもらったので、喜んで見てみた。なかなか内容の濃いドキュメンタリーだった。

2007年5月に東京国立劇場で行われた『文楽太棹 鶴澤清治』において、1日だけ鶴澤清治さんが竹本住大夫さんと共演した。演目は『壇浦兜軍記〜阿古屋琴責の段〜』。公演当日を迎えるまでの様子をカメラが追う(公演内容のほうはDVDとして来月発売になるらしい)。

文楽のことを知りたくて、いろいろと資料を読んでみるが、読んでわかったつもりになって、実は全然理解していないことがたくさんある。番組中で鶴澤清治さんの“悩み”が紹介され、改めて「あっ」と思った。
 そういえば、住大夫さんが語るときは野澤錦糸さん、綱大夫さんは鶴澤清二郎さん、嶋大夫さんのときは竹澤宗助さん、鶴澤清治さんは切場のときに床に上がることはない。四代竹本越路大夫さんの三味線を務めていたときは事情が異なっている。勿論どんな場合でも魂を込めて弾くのだろうが、心中さまざまな想いがあるだろう。こういうことに気づかせてもらえただけで、この番組を見た甲斐があったというものだ。

ビリヤードに興じたり、ご自宅に飾られているものが意外に洋風だったり、と清治さんのふだんの姿が見られたのは面白かった。住大夫さんが仲睦まじく奥様と犬の散歩に出かける場面もよかった。

しかし住大夫さんが文字久大夫さんにお稽古をつけるシーンは、見ているほうがびっくりするほど怖かった。お稽古なのだから厳しくて当然とはいえ、こんなに叱られないと一人前になれないのか……と驚く。住大夫さん、「馬鹿!」までおっしゃいましたからね。
(余談だが、関西の人は「アホ」と言われるより「馬鹿」のほうが堪えるのではないだろうか。親の転勤で大阪の小学校に転校したとき、東京にいた頃と同じように「バッカみたい」と口にしたら、クラスメイトがすーっと引いたのがわかった)

いつも、文楽の舞台はどのように作られるのだろうと興味があったので、(言葉は悪いが)“出歯亀”趣味は大いに満足させていただいた。しかしこんなところまでカメラが入り込むというのは、よくよく考えれば非常に失礼なことであり、よくぞお許しになったものだと思う。これも文楽のため、文楽を後世に遺すため、ということでOKなさったのだろうが、本当に有難いことである。

ふだん一緒に舞台を務めることのないお2人が、お互い相手に“合わせる”ことなく、それでも何とかひとつの舞台を作り上げて行こうとする努力と葛藤。公演直前のリハーサル・シーンには、どんなサスペンス映画も敵わない、鬼気迫る空気があった。

清治さんのまっすぐな視線にグッときた。住大夫さんの仰る「えらい商売」という言葉が心に沁みた。ますます文楽が好きになった。

※ 番組中、1シーンだけ文吾さんが映った。ああこのときはご健在だったのに、と思うと寂しくてならない。改めてご冥福をお祈りする。
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by slycat | 2008-02-10 23:04 | 文楽

国立劇場文楽2月公演

前日の天気予報では朝から積雪の恐れ、ということだった。電車が止まりでもしたら嫌だなぁと思っていたのだが、今にも降りそうな空模様ではあったものの、何とか降られずに済んだ。

国立劇場の文楽2月公演、今回は第2部を観に行った。楽しみは最後の演目『壺坂観音霊験記』。住大夫さんが娘義太夫さんの三味線でこれを語って出征した、というのを読んで聴いてみたいと思っていた。ようやく体験できることになって嬉しい。

二人禿
ふたりはげと読んでしまいました(ににんかむろである)。半七捕物帳に『かむろ蛇』という作品があるのに、いい年して漢字が読めないとは恥ずかしい。人前で口に出さなくてよかった。
 恐らく「景事」に分類されるのだと思うが、可愛らしい切り髪の少女が2人、羽根つきや毬つきに興じる様が描かれる。途中の歌で横溝正史の『悪魔の手毬唄』を思い出してしまったが、雑念を振り払って人形の動きを楽しむ。
 大阪の初春公演と同様、しだれ桜があしらわれていたのが綺麗だった(ただし大阪のときと異なり桜は1列のみ)。人形はお揃いの紅い着物。袖を振るたび揺れるフリンジ(?)のような飾りも可愛らしい。曲も綺麗で退屈しない。

鶊山姫捨松
〜中将姫雪責の段〜
非常にややこしい話がこの段の前にあるらしい。登場人物は、右大臣藤原豊成、その娘中将姫、次期天皇の座を狙う長屋王子の乳母であり豊成の後妻である岩根御前、長屋王子派の藤原広嗣、豊成の館に勤める侍女の桐の谷と浮舟。

藤原豊成の館。侍女の桐の谷と浮舟が争っているところへ岩根御前登場、中将姫に味方する桐の谷を「憎き女」とののしり、追い払う。さらにそこへやって来た藤原広嗣と2人、中将姫を殺してしまおうと話す。

素足に下げ髪の中将姫が奴たちに引っ立てられ登場。上手に姫の半身が覗いただけでゾクゾクっとするオーラが……。遣うは吉田文雀さんである。凄いものだ。語るのは豊竹嶋大夫さん、こちらも最初からお顔にパァーッと血が上り、たっぷりと聴かせてくださる。

襦袢1枚で庭に突き放され、割竹で打ち据えられる中将姫。姫にかけられた疑い(=千手観音の尊像を盗んで隠した)は実は責めている側の岩根御前の企みなのだが、何がどうしてこうなったのか、岩根御前という人物はよほど悪どく、よほど権力があるのだろう。

姫があまりにも哀れで、奴たちも打ち続けることができなくなると、ついに岩根御前が自ら手本を示す、と割竹を手に取り姫を打ち始める。陰謀の完成のためなのか、あるいは前妻への嫉妬がこうさせるのか。人形とはいえ凄惨で見るのもつらい。
 桐の谷が駆けつけ割竹を取り上げると、浮舟も出てきてまたもや女の戦いに。この騒ぎの中、浮舟の振り上げた割竹が姫に当たり、姫は絶命。すると、もともと姫を殺すつもりだったのに広嗣と岩根御前、これはヤバいとこそこそ逃げて行く(最初からこんなことしなければいいのに……)。

不仲と見せかけていた桐の谷と浮舟、実は同志であり、姫は死んだ振りをしていただけ(だったらあんなに叩かれる前に助ければいいのに……)。歩くのもままならない姫を両側から支え、鶊山に逃れようとすると、豊成登場。岩根御前の悪行は知っていたけれど、ここで岩根の邪見を明らかにすれば天皇に迷惑がかかるから黙っていた、と言う。死骸となった娘にせめて別れを告げたいと出てきたのである(後妻を離縁することはできないんだろうか?)。

「コリヤ推量せよやふたりの者、親ぢやもの、子ぢやもの、心の内の悲しさは鉛の針で背筋を断ち切らるるもかくやらん」……と、真情を吐露する豊成の語りの辺りで、三味線の糸が切れてしまったらしい。ふと床のほうを見ると、手早く代わりの糸を張り調節している竹澤宗助さん。こういうこともあるんですねぇ。しかし、見ていなければ気がつかなかっただろうと思う。

侍女の制止を振り切り父の前に出る中将姫。親子が別れを惜しむ場面でこの段は終わる。浮舟と姫はいつ打ち合わせをしたのだろうとか、後で死んだ振りをするのなら、責められている間に口にしたことは一体何だったんだろうとか、いろいろ疑問の多いお話ではあったが、とにかく姫が拷問されるところが非常にリアルで残酷で、それに驚いてしまって観ているうちは何も考えなかった、凄かった。

壺坂観音霊験記
〜土佐町松原の段〜
壺坂寺の縁日、参詣帰りの人々が茶店で休んでいると、お里が通りかかる。お里は盲目の夫、沢市によく尽くし、しかも美人。褒めそやす人々。お里は、沢市こそ立派で自分には過ぎた夫であると言い、みんなはすっかり感心して、観音様にお願いしてみてはと勧めるが、お里は貧乏暇なしだと言って家路を急ぐ。

〜沢市内の段〜
ここが本日のお楽しみ、聴いてみたかったところである。語りはもちろん住大夫さん。

せっせと縫い物などに励むお里。沢市が珍しく三味線を弾き唄など歌っているので、「よい機嫌ぢやの」と話しかけると、「モウモウ気が詰まつて詰まつていつそ死んでものけう」などと言う沢市。
 夫婦になって3年の間、毎晩七つになると妻が家を抜け出すことをずっと気に病んでいたが、自分は盲目であり顔には疱瘡の痕があるのだからもう諦めている、他に男がいるのなら嫉妬などしないから打ち明けてくれ、と頼む。
 3年にもわたって鬱々と我慢していたのは驚きだが、自分は妻に不釣り合いだと思っている沢市の心情が切ない。思わずつられて涙ぐんでしまう。しかしお里にしてみれば、こんなことを言われるのは青天の霹靂である。ここから有名なお里の口説、「三つ違ひの兄さんと、云ふて暮らしてゐるうちに……」が始まる。
 この口説、書かれたものを読んだ印象では、取り乱したように力を込めて語るのかと思っていたのだが、住大夫さんは意外なほど静かに、だが切々と語った。あぁ、これなんだ、こういう語りなんだ……と感動を覚える。

3年の間、お里は夫の目を治してくれるよう観音様にお詣りし続けてきたのだった。自分の悩みを思わず口にしたことで、初めて妻の誠実な気持ちを知り、お里に詫びる沢市。何事かを思って「未来は……」と言いかけ先を言わない妙、ここで先の展開に含みをもたせておいて、お里とともに観音様にお願いに行くから手を引いてくれと言う。

※ 住大夫さんの白湯汲みをなさっていた太夫さん(文字久大夫さんでしょうか)、語りの間中、ずっと口許が動いているのが見えました。やはり稽古熱心な師匠には稽古熱心なお弟子さんが育つのでしょう。こうやって芸を磨いていくんですねぇ。

〜山の段〜
お互いに相手のことを思い遣りながらすれ違っていた夫婦をしみじみと静かに語った住大夫さん。最後の段は伊達大夫さん病欠のため千歳大夫さんがピンチヒッターを務めた。すると、沢市が別人のようになってしまってビックリ。
 実は沢市には思うところがあってわざと快活に振る舞っているので、多少人格が変わったように見えてもおかしくない理由はあるのだが、太夫さんそれぞれの個性というのは面白いものだ。
 明るく山を登っていき、本堂まで辿り着く2人。沢市はお里に、ここで3日間断食してお願いするから、お前はいったん戻って用事を片付けるようにと言う。お里は沢市の言葉を信じてこの場所を動かないよう念を押し、家に戻る。
 お里がいなくなると沢市は、妻が3年間も祈り続けてもご利益はないのだから、妻の幸せのためには自分がいなくなればいい、と谷底へ身を投げる。しばらくして、お里が戻ってくると沢市の姿が見当たらない。ここですでにお里の髪や着物が乱れているのはおかしいな、と思ったのだが、胸騒ぎがしたので慌てて駆け戻ったということを表しているのだろう。
 沢市が残していった杖を見て崖に上り、谷底に夫の遺体があるのを発見して、お里は半狂乱で連れて来たことを悔やむ。この悔やみ方が物凄い。「エヽこちの人聞こえませぬ聞こえませぬ、聞こえませぬわいな〜」。語りも人形も実に迫力がある。

散々悔いた後、お里はこれも運命と冷静になり、夫の後を追って身投げする。ここで終わってしまうとやり切れないが、このお話のよいところは、ちゃんと続きがあることだ。
 観音様が現れ、沢市の目が見えなくなったのは前世の業によるもの、しかしお里の日頃の信心に応えてもう少し寿命を延ばしてやろう、と告げると、2人は生き返る。しかも沢市の目は見えるようになっている。2人で観音様の霊験を喜び、感謝するところでおしまい。

拷問の後だけにハッピーエンドは気持ちがいい。明治の作品なので言葉もわかりやすくて、私のような初心者には向いているかもしれない。

ところで、今回「資料集」というのが売られていたので買ってみた。上演年表や解説、芸談などが収載されている。この芸談はちょっと素人には難しかったが、よく読んでおいて、いつか今日の演目を見直したときに参考にしてみたい。

三宅坂を出たときはまだ降っていなかったが、練馬に戻ったらみぞれが降っていた。雪は大好きだが、とりあえず帰るまで積もらなくてよかった。これも観音様の霊験か?f0061021_2461125.jpg
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by slycat | 2008-02-10 03:03 | 文楽

文楽初春公演:その2

チェックインを済ませて邪魔な荷物を部屋に置き、雨の湿気で乱れた髪を直して再び文楽劇場へ向かう。暑いので、直した髪も化粧もすぐによれよれになってしまうのだが、何とか辿り着いた。コートをロッカーに押し込んで自分の席に向かうと、今度はど真ん中。すでに着席している人たちに「すみません、すみません」と謝りながら席に座る。

第2部
国性爺合戦
〜平戸浜伝いより唐土船の段〜
中国・明代の英雄、鄭成功の活躍を下敷きに書かれた物語。故あって明から日本に亡命した鄭芝龍は、老一官と名前を変えて日本女性と結婚し、和藤内という息子をもうけていた。
 和藤内とその妻小むつが仲良く貝をとっている。若い夫婦の他愛ない日常のひとこま、そんな場面でも鴫と蛤の争いを見かければ、大明国と韃靼国との争いに重ねて軍法を学ぶ和藤内である。
 その浜に明国の皇女が乗った船が流れ着き、和藤内の運命が一変する。小むつを日本に置いて、明国へ旅立つ和藤内とその両親……と発端はこういうお話なのだが、前日からの疲れがここへきてピークに達し、必死の抵抗にもかかわらず眠くて何が何だかわからなかった。これはいけません。

〜千里が竹虎狩りの段〜
助かったことに、この段は派手で楽しい場面だった。眠気もどこかへ吹き飛んでいった。老一官が明国に残し生き別れとなっていた娘、錦祥女の夫、五常軍甘輝将軍の力を借りるため、老一官は1人で、和藤内は母とともに、二手に分かれて城を目指す。
 城へ向かう途中、通りかかったのが、虎が出るという竹林。早速虎がお出ましになる。妙に可愛らしくて憎めない虎だった。母の知恵で、「伊勢大神宮/天照大御神」のお札をかざすと、虎はすっかりおとなしくなる。ついでに、虎狩りに来ていた李蹈天の部下たちも家来にしてしまう。家来のヘアスタイルを日本風の髷にしてしまうあたりに笑える。

〜楼門の段〜
親子3人、城の前で合流するが、警護が厳しく中に入るのは不可能。錦祥女に取り次ぎを願うが、「我々だって拝顔したことがないのに」と警護兵に突っぱねられる。しかし錦祥女のほうから顔を見せてくれたため、楼門の上と下とはいえ、老一官と娘、親子の対面が実現する。
 大きなセットで、錦祥女が顔を出すのは2階である。美しい異国風の衣装の錦祥女、遣っていたのは吉田文雀さん。久々にお顔を拝見できて嬉しかった(文雀さんのお顔は余分な表情を排していながらちゃんと錦祥女の感情を表しており、清々しい、を通り越して神々しい。年をとるのであればかくありたい、と思う)。
 甘輝将軍が留守の上、異国者は中に入れられない、という事情を汲んで、ここでも知恵を出すのは和藤内の母。お婆ちゃんが1人で中に入っても悪さができるわけでもなし、と言う。韃靼国への配慮から縄付きとなってしまうが、それでも将軍に老一官たちの願いを伝えるため、城内へ入る。
 和藤内がどちらかといえば度を超した熱血漢で、母に縄とは何事か、とすぐに怒り出すのだが、大事を人に頼むのだから一時の恥くらい何だ、と息子を諭す母の偉大さが際立つ。甘輝将軍が味方になると返事をしてくれたら城の堀に白粉を溶いて流し、駄目だったら紅粉を流す、と合図を決めて、親子らは別れる。

〜甘輝館の段〜
縄付きではあるが、錦祥女にとっては義理の母、和藤内の母は手厚くもてなされている。日本の着物がどうの、おむすびがどうの、と賑やかな女官たちのお喋りの後、将軍が帰館する。
 明国再興のため和藤内たちに力を貸して欲しい、という願いを承知する将軍、しかし、妻のために味方したと思われては恥、と錦祥女を殺そうとする(頭、硬いなー)。ここでおめおめと義理の娘を殺されては日本の恥、と必死で阻止する和藤内の母。

〜紅流しより獅子が城の段〜
川下で合図を待っていた和藤内が見たのは、紅い流れ。こうなっては一時も早く母を救い出そうと城に向かう。甘輝将軍と刀を交えようとする和藤内。それを止めに入った錦祥女、髪乱れて息も絶え絶えである。実は先ほどの紅い流れは、紅粉を溶いたものではなく、錦祥女の血だった。先ほどまでの豪華な衣装から、髪飾りも取ってはかな気な姿となった錦祥女が哀れでならない。
 自分の命を断ってまでも父と弟に協力して欲しい、という妻の気持ちに応え、将軍は和藤内に力を貸すことを決意。それを喜びつつも、義理の娘だけを死なせるわけにはいかないと、和藤内の母も自害する(老一官は、わずか1日のうちに娘と妻を失ったことになるわけで、あまりにも哀れ)。
 お互い、妻の仇、母の仇と思えば明国再興の力になるだろう、という死に際の母の言葉が重い。和藤内は「国性爺鄭成功」と名乗ることになって、甘輝将軍とともに今後の戦いに誓いを立てる。
 男の意地の張り合いで、賢明な女性2人の命が失われたかと思うと、何だか納得できない面もないではないが、女性の健気さが光るお話だった。

さすがに1日通しての文楽鑑賞はキツかった。ただ座っているだけなのだが、お話に起伏があるためどうしても力が入り、思った以上に体力を消耗した。最初から1泊するつもりだったら2日に分けたのだが……(泊まることにしたのは直前だった)。次は無理のないプランを立てよう。
 すっかり暗くなった街に出て、ホテルに向かう。でんでんタウンの店もそろそろシャッターを閉める頃。それでも何か食べておこう、と再びホテルを出て、「なんばこめじるし」というところに入っているラーメンの店に入った。息子がいれば、あれが食べたい、これを食べよう、とうるさいが、1人なのでラーメンでちょうどいい。
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 大阪でラーメンを食べたのは初めてで、これは「堺ラーメン」だそうだ。がんこ系のような塩スープで、少し塩気が強いようにも思ったが、疲れていたのでさっぱりしているのが有難かった。

つるっと食べて、ついでに黒門市場を通ってホテルに帰る。ほとんどの店は閉まっていたが、八百屋さんの店先に「万願寺しし唐」が250円で並んでいたのにはちょっと気を引かれた(安い)。持って帰るうちに潰れてしまいそうなので諦めた。いろいろなお店が開いている時間だったら面白かったのだが。

夜中にホテルで映画を観てしまったため(無料だったのでつい……)翌日は寝坊した。あたふたとチェックアウトして、今度はなんばOCATからバスに乗り、14:00の飛行機で東京に帰った。お土産を選ぶ時間もろくろくなかったので、「ナンバなんなん」の中にある「会津屋」でたこ焼きだけ買って帰った。もうちょっと旅慣れないといけないな。

次は1人か、それとも子連れか。できるかぎり大阪に足を運んで、文楽を楽しみたい。
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by slycat | 2008-01-18 01:59 | 文楽