ミステリ・テニス・ハムスター・モルモットについてあれこれと……
by slycat
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不可思議なり〜文楽5月公演〜

文楽5月公演(国立劇場小劇場)
第2部 心中宵庚申、狐と笛吹き


昔、まだコンピュータゲームといえば「ファミコン」だった頃。近所の商店街にあった小さなゲーム店(今はもうない)で品薄だった『ドラゴンクエストIV』を見つけ、喜んで買おうとしたら、ドラクエだけでは売ってもらえないことがわかった。もう1本ソフトを買うのを条件に売ってくれるという。しかし選択肢は少ない。『寺尾のどすこい大相撲』(だったかなぁ、北尾のゲームだったような気もする)だとか、買いたくないのばっかり。
 ドラクエIIIからゲームを始めた私は、その時点でまだドラクエIIをプレーしていなかったので、お店の人と交渉し、ドラクエIIとIVの2本セットということでようやく売ってもらった(結果的にはIIのほうが面白かったな……)。いま思い出しても、この「抱き合わせ商法」には疑問を感じている。買うほうが悪いのかもしれないけれど。

今回の文楽公演、何だか「抱き合わせ」を髣髴とさせるような演目の組み合わせと言ったら失礼だが、観終わって少々拍子抜けしたことは事実である。

心中宵庚申
言わずと知れた人気作品。先日テレビで観た『闘う三味線〜人間国宝に挑む』でも、冒頭の住大夫さん紹介のシーンで、上田村の段が使われていた。

〜上田村の段〜
いきなり住大夫さん登場。先月大阪で拝聴した際には、少々お疲れか、と心配もしたのだが、今回は伸び伸びとしたお声を存分に聴かせていただくことができて感激である。しかも人形を遣う方々はヴェテラン揃いで超豪華な顔触れ。これを見逃すいわれはないでしょう。

〜上田村の段〜
京都山城の大百姓、島田平右衛門には2人の娘がいる。長女おかるは婿をとって実家を守り、次女の千代は大阪の八百屋に嫁入りしている。千代は最初の結婚を失敗、2度目は夫に先立たれていたが、今度は姑に嫌われ、夫・半兵衛が留守の間に無理矢理離縁されて実家に戻されてしまった。
 バツ3くらい今の世ならば痛くも痒くもないところだが、この時代には一大事。妹が離縁されたと知ってカッとなった姉のおかるが放つ皮肉は強烈だ。しかし、妹・千代の嘆くさまを見て、すぐさま妹を哀れと思う、そんな瞬時の心の動きが違和感なく伝わってくる。
 そして何も知らずに手土産(わさび漬けかなぁ)持って訪ねてくる千代の夫・半兵衛の無邪気な優男ぶり、冷たくあしらうおかると、これまた強烈に悪口雑言を浴びせる舅・平右衛門の堂々たるさま、さまざまな思いを抱えた人物たちの描き分けを楽しむ。舞台の人形を見ようか、それとも住大夫さんの豊かな表情を見ようか、大いに悩みどころだった(今回は床に近い席だったので特に悩みが増した)。

この半兵衛という人は武士の出であるため、妻が義母の勝手で離縁されたと知ると、責任をとるべく自害しようとするのだが、潔いというよりは子供っぽい。そこにすかさず「止めるな娘、存分に自害召され。見物せん」と言い放つ平右衛門の対応はさすがに大人である。
 先に「よう戻りやつた。父様お聞きなされたらお悦びなされうぞ」とおかるが妹を叱りつける言い方にも驚いたのだが、このような逆説的な言いようは血筋だろうか、なんてことを思う。

平右衛門の言葉に、自分の浅慮に気づいた半兵衛は千代を連れて大阪へ戻ることにする。平右衛門はおかるに用意させて半兵衛・千代と水盃を交わし、さらに別れの門火を焚くようにおかるに指示。
 このときおかるは「エヽ、忌々しい」と思うのだが、この語の意味がわからず辞書を引いたら「縁起が悪い」。もっと真面目に古文を勉強しておくべきだった……。この意味深な別れの儀式がなぜ行われたのか、後になって平右衛門の「読み」の力に恐れ入ることになるのである。

余談。千代が平右衛門の希望で『平家物語』を読み聴かせるシーンで「『網島の心中』もござんする」と千代が言うのは、当時の観客に向けた「楽屋オチ」サービスだったのかなぁ、と思ったのだがどうなのだろう。

〜八百屋の段〜
ここで登場する半兵衛の義母は、文楽の中の「イヤなババァ」ワースト1じゃないか、と思うくらいいや〜なお婆さんである。嶋大夫さんが語ると、さらにその嫌味が倍増する。
 『伊勢音頭恋寝刃』の万野は言ってみれば金に汚いだけだし、『桂川連理柵』のおとせは自分の子を跡継ぎにしたいという親心もあっての意地悪だったが、八百屋の義母が半兵衛、千代をいじめる理由はわかりづらい。
 もちろん現代においても嫁姑問題は起こりうるので、「嫁」というだけで憎いのかもしれず、案外深い意味などないのかもしれない。それにしてもね……。

千代と一緒に大阪に戻ったものの、家に入れるわけにもいかず親類に預けていた半兵衛、しかしそんなことはとっくに義母にバレていた。やむなく半兵衛は、義母が嫁を追い出したとあっては世間体が悪い、自分がきっと離縁するからと約束する。
 義母に戻って来いと言われて大喜びで帰ってくる千代、早く主婦としての役目を果たしたい。蚊帳を出さなければ、まぁまだ炬燵が出しっ放しだわ、漬け物を確かめなくちゃ、といそいそとする姿に半兵衛は「エヽ、可哀や。利発なやうでも女心」と涙ぐみつつ事情を明かす。
 義母が帰ってきて、非常にわざとらしく半兵衛に離縁を促す。離縁しなければ死ぬと脅かされている半兵衛は義母に従うしかない。しかし上田村での約束も果たさなければならない。2人にはもはや死ぬしか道は残されていなかった……。

〜道行思ひの短夜〜
宵庚申の夜、若い男女が楽し気に通り過ぎる。片や半兵衛と千代は、死に装束に身を包み、死に場所を探す。
 深紅の毛氈を敷き、念仏を唱える千代だが、「待つてたべ、待たしやんせ」。「待てとは未練な」と叱咤する半兵衛に、「可哀やお腹に五月の、男か女か知らねども、この子の回向してやりたい」。陽の目を見せることもなく死なせてしまう我が子が哀れと言う千代が、これまた哀れで涙を誘う。昔の数え方はわからないが、妊娠5ヵ月ともなれば胎動を感じる頃なのに……。
 どこか田舎に2人で逃げて、畑を耕しながら暮らす道はなかったのか、と現代の自分は考えてしまうが、半兵衛が元武士であるという設定がこの悲劇を生むのだろうな、とも思う。そしてあの立派な父に育てられた千代も、人をないがしろにしてまでは幸せを選んだりはできないのだろう。

毛氈を敷いた上での心中、というのは鮮烈で、かつ残酷だ。『桂川連理柵』ではあまり語られなかったが(母親が14歳では仕方がないか……)、死によってお腹の子の命まで無惨に散る理不尽さが、長く記憶に残りそうである。

狐と笛吹き
チケットを取ってくれた友人が、「あらかじめ言っておいたほうがいいと思うんだけれど、次のは文楽じゃなくて文楽もどきですから」と言う。へぇ、そうなんだと応えつつ予想がつかないので、とにかく観てみるしかない。
 お話は『今昔物語』を基に書かれたもので、昭和33年初演だという。先に歌舞伎で上演されているらしいが、歌舞伎版とは結末が違うのだとか。人間と狐の娘の、悲しい恋の物語である。

〜その一 春のおぼろ〜
〜その二 夏の月夜〜
〜その三 秋の落葉〜
しかし、う〜ん……。物凄く違和感があるのは、言葉が中途半端に現代語になっているからか。それとも床に当てられた照明のためか。うまく説明できないのがもどかしいが、四季の移り変わりとともに淡々と進んでいく場面のどこへも気持ちを入れることができない。
 舞台はとてもきれいである。衣装も凝っていて素晴らしい。でも何か違うんだよなぁ。鶴澤清治さんの素晴らしい三味線と清志郎さんのお琴による盛り上がりは物凄かったが、コンサートに来たわけじゃないし……。

〜その四 冬の寒灯〜
ここから人形が出遣いとなる。人間と狐が交わると死を招く、という言い伝えを守り、清らかな関係を続けている主人公・春方とともね。ともねの母が近江から娘を迎えにやってくる。春方に受けた恩を返すために娘を寄越した母だったが、2人が危ない崖に立っていることを危惧して訪ねてきたのだった。
 春方が楽人仲間と一緒に泥酔して帰ってくる。笛の師匠に「最近、笛の音が濁っている」と叱られたのだった。ともねは春方の身を案じる一心で春方を拒むが春方には通じない。ともねは母に連れられ家を出る。

酔った春方が座敷に上がるところで、玉女さんが何かにけつまづいてよろけてしまった。千秋楽なんだけどなぁ。決して玉女さんのことが嫌いなわけではないのだが、なぜか彼を見ているとハラハラする。
 「その三」で、
「私たちは人間と狐ではない。ともねと春方ではないか。うまれた世界は違っていても、私は一生お前を離さない」
「私たちは一生清らかな二人でいよう。男と女ではなく兄と妹として二人でいよう、私にはそれができる、きっとできる。安心おし」
ときっぱり宣言したにもかかわらず、春方のこの体たらく。だらしないしみっともない。
 おまけに、春方を語る文字久大夫さんが身を乗り出さんばかりの大熱演で、これがかえって恥ずかしい。半ば唖然としているところへ、極めつけが、ともねの「反撃」。これには誰もが堪え切れず、ついに会場がどっと沸いてしまった(もちろん、笑ったのである)。

〜その五 雪の深山〜
〜その六 雪の湖〜
母に連れられ重い足取りのともね。琵琶湖が見えてきて、母はこれでひと安心と思うが、ともねの心は晴れない。そこへ春方がともねを追いかけてくる。2人はお互いにもう離れない、と誓い、かくなるうえは湖に身を投げて、あの世で夫婦になろうと願う。

最後の場面、まさかね、出てくるな、出てくるなよ〜と念じていたのだが、やっぱり母が娘を追って出てきてしまった。さらなるダメ押し、ともねが母に向かって手を振り別れを惜しむ。わーもう、何とかして欲しい。
 歌舞伎版では掟を破ったともねの亡骸を抱いた春方が湖に身を沈める、という結末だったそうだが、そちらのほうがずっとよいのではないか。どうしてこうなってしまうのか、何だかよくわからないのである。

会場を出て地下鉄の駅まで友人と歩きながら、あれこれと話した。友人曰く「結局肉欲かよ……」。もっともだ。もちろん愛がきれいごとだとは思わない、だけどあまりにもストレートで含みのない表現に、どう反応してよいのかわからない。
 それでも演じる太夫さん、人形遣いの方々、演奏の方々は皆大真面目で務めていらっしゃるのだから、笑ってはいけない、と思ったのだが、笑わずにいることができなかった。変な組み合わせの公演だった。

文楽の新作を作るというのは難しいことなんだな、ということがわかっただけでも収穫なのかもしれない。それこそ狐につままれたような気分で帰路を急いだのである。
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by slycat | 2008-05-27 00:09 | 文楽

進化の行方

公私ともにいろいろあって疲れる毎日、おばさんを癒してくれるのはペットたちである。どんなにくたびれていても、家に帰ればハムスターとモルモットに餌をやらなければならず、あぁ面倒だ、と思いながらも、夢中で食べている彼らを見れば、よかったよかった、と嬉しくなり元気が出る。

しかし最近のプー(モルモット)は生意気だ。最初はあんなにビビリでおとなしかったのに、近頃では大いばりである。いったん馴れてしまえば人間など全然怖くないことがわかってしまったらしい。

大昔に観た映画(多分ハワード・ホークス監督)でアダムとイヴを主人公にしたものがあり、サイレントだったので場面と場面の間に字幕が挟まれるのだが、こんなのがあった(うろ憶えだが……)。

In ancient days, women had three problems.

ここでいったん、ワードローブをあれこれ矯めつ眇めつしているイヴの映像が入り、次の字幕。

I have nothing to wear.
I have nothing to wear.
I have nothing to wear.

そして映画の場面は現代のアダムとイヴへと移り、女性が抱える問題は今も昔も変わらない、というオチとなるのだが、これを我が家のプーに置き換えると、こういうことになる。

In these days, Pooh has three problems.
I have nothing to eat.
I have nothing to eat.
I have nothing to eat.

もちろん、飼い主は敢えて可愛いペットを飢えさせようなどとは夢にも思っていない。しかしプーにしてみれば、欲しいものが十分に手に入らない、という不満があるらしい。以前は一度で済んでいた夜のおやつだが、最近ではお代わりを要求するようになってきた。

夜、プーはいつものようにおやつを待って扉の前にいる。飼い主がおやつをやると、ものの2、3分で食べ切ってしまうプー。しばらくして飼い主が様子を見に行くと、プーの鳴き声攻撃が始まる。もっと寄越せというのである。

そんな贅沢な、ペレットがまだあるじゃん、と思うのだが、発声機構に問題があるらしく普通のモルモットのように元気よく「プイプイプイ!」と鳴けないプーは「ピューピューピュー」と哀し気につぶやいては飼い主の胸を貫く。

結局「ああわかった、わかった」と何か追加することになってしまい、プーの思うつぼだ。おかげで、取り寄せた生牧草(2kgも買ったのに)は2週間もたず、またまた注文しなければならないし、毎日のようにスーパーに寄ってはパセリだのサラダ菜だの買い足さなければならず(しかも芯や茎は食べない)、飼い主はプーの奴隷と化した。

古代インカ帝国では食用として飼われていたモルモット。衣食足りて礼節を知るというが、満ち足りた人間はモルモットを「可愛い」と認識するようになり彼らを食べることをやめた。現代に生きるプーは何の憂いもなくお代わりをリクエストできる。

これは進化だ、よいことなんだ。今日もまたあたふたと餌を用意する。

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(脇目もふらず生牧草を食べるプー……いいカメラが欲しいナ)
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by slycat | 2008-05-22 22:13 | モルモット

ハンブルク決勝

R. Nadal d. R. Federer 7-5, 6-7, 6-3

モンテカルロでも対戦しているのだが、何だか久しぶりな気がするトップ2対決。前日のナダル対ジョコビッチ戦があまりにも素晴らしかったので、あれ以上の試合があるんだろうか、と思ったが、上には上があるもので。準決勝に負けず劣らず凄い試合となった。テニスは奥深い。

<第1セット>
予想通りというか、今日もいきなりフェデラーにブレイクされて0-3。昨日引いておいた線をなぞるような展開でいやだなぁと思っていると、4ゲーム目をキープ。ジョコビッチも強いが、相手がフェデラーなので、前日と同じように追いつけるかどうか保証はない。いやな感じは続き、みるみるうちに1-5となりフェデラーのサービング・フォー・セットとなってしまったが、ここで踏ん張るナダル、フェデラーのミスにも救われたかたちでブレイク、2-5となった。

しかし、ナダルがトレーナーを呼ぶ。右の腿か脚の付け根辺りに痛みがあるらしい。トレーナーが「ここ?」という感じで触ると、一瞬飛び上がるほど痛かったようだ。涙が出てしまったのか、目の辺りを拭う。せっかくここまできたのに、まさか棄権……。

でもナダルはコートへ戻った。表情は冴えないが、集中力は切れていない。デュースに持ち込まれたものの、しっかりキープする。
 再びフェデラーのサービング・フォー・セット。2人とも丁寧に打っていく。ナダルのバックハンドが結構よさそうだ。スピードと角度がついている。スライスも交えながらチャンスを窺い、逆クロス。痛みが去ったわけではなさそうだが、ナダルがブレイクした。大したものだなぁと感心する。続く第10ゲームもキープした。前日のように湯気が出るほどの熱闘、という印象は全然ないのだが、じわじわとナダルがフェデラーを苦しめ始めた。

ほんの15分前までは、フェデラーがあっさり第1セットを取るのかと思っていたのに、気がつけば5-5。王者フェデラーに「苦手意識」なんてものがあるのだろうか(解説の辻野さんがおんなじことを言った。明らかに変だよねぇ)。不思議でたまらないのだが、ラリーで根負けするのはフェデラーのほうなのだ。本人も頭に来るらしく、「Nein!」と叫んだ(こういうときはドイツ語なんだ)。ナダルがブレイクして6-5。
 一流のアスリートは、どこかに故障や痛みがあるほうが知的にプレーできるのかもしれない。非常に冷静なプレーを続け、何とナダルが第1セットを取った。思いもよらない展開に、狐につままれたような気持ちになる。

<第2セット>
フェデラー、まだ具合が悪いのだろうか(右のほっぺの痣も気になる)。昨日のジョコビッチのほうが、もっと勝ちそうな雰囲気をもっていた。打っても打っても返してくる相手に、次第に苛々させられ調子を狂わされるのだろうか。

お互いにブレイクし合って1-1。ネットに出ていくと、さすがにボレーではフェデラーに安定感があるが、まだしっくり行っていない感じがする。それでもそう簡単に負けるわけがない。フェデラーがサービスキープ。
 その後のフェデラーは顔色こそすっきりしないものの、確実なサーブやスーパーショットでナダルを苦しめ、再び4-1とリードを奪っていく。それでも笑顔ひとつ見せるでなく、険しい表情のまま。ナダルがキープして4-2。
 フェデラーのサービスゲーム。デュースになったが、ナダルのリターンがアウト。きっちりといいサーブを放って、フェデラーがキープ。5-2までナダルを追い詰めた。
 ナダルのサーブ。バックハンドのボールがネットにかかったりとらしくないミスがあったものの、セカンドサーブをエースに決めたり、落ち着いてキープすることができた。
 続いてフェデラーのサービスエース。しかしナダルにミスを誘われ、続けてボールが大きくアウト。ナダルのブレイクチャンス。ここをフェデラーが渾身のフォアで凌ぎ、続いても厳しいボールでデュースに。だが結局ナダルにもっていかれてしまった。5-4。そしてナダルが再びキープ、またもや5-5となった。

フェデラーのサービスゲーム。0-40まで追い詰められたフェデラーの逆襲が見事だった。さすがに今度は第1セットの繰り返しはしない。フェデラーがキープ。
 ナダルにダブルフォルトが出て冷や冷やさせられる。しかしナダルはいささかも動じず。むしろ球にキレが出てきたかもしれない。ついにタイブレイクに突入した。

ナダルの逆クロスが面白いようにコーナーに決まる。何なんだろう、この落ち着きは。しかしフェデラーのドロップショット、ナダルの返球がアウト。続いてフェデラーが見事なフォアで2ポイント奪取。ナダルが速いサーブ、ネットに出ながら打ったボールがアウト。悔しそうな顔のナダル。次はフェデラーの浅いスライスを受け損なってネット。フェデラーの5-2となる。
 ナダルのきれいなパッシングで5-3。フェデラーがドロップショットで6-3、最後はフェデラーがダウン・ザ・ラインで決めて第2セットを取る。またまたファイナルセットにもつれた。うーん、やっぱりすんなりとはいかないのだ。

<第3セット>
ナダルのサーブで始まる。ナダルがネットプレーを見せる。戦術を変えたか?と思ったが、同じことを続けるわけではなかった。ここでもフェデラーに悔しいミス。ネットに額をゴッツンコする珍しい場面が見られた。何だか今日のフェデラー、顔つきこそ険しいものの、まるでコメディアンがやるような「がっくり」ポーズを見せたりして、妙に可愛らしいことをする。試合の最中にふざけているわけではないので、ひょっとしたら元々こういうキャラクターなのかも。

フェデラーのサービスゲームでは、厳しいボールをナダルのバックハンドサイドに集めて難なくキープ。ナダルにまたまたダブルフォルトが出るが、こちらも負けずにフェデラーのバックハンドを攻めてキープした。前日とはまた違った味わいがする「意地の張り合い」である。

第4ゲーム、今度はナダルが先にブレイク。今までとは違う展開で、あれよあれよと言う間にナダルの4-1に。だけどフェデラーは何と言ってもNo. 1プレイヤーである。安心する暇も与えずサービスキープして4-2とし、その勢いでナダルのサービスゲームにプレッシャーをかける。さあ、ここで追いつかれたら、ナダルも苦しいぞ。
 2人とも互いに走らされ、いったん端まで行ったら戻るのもひと苦労だ。それでも走る、打つ、また走る。さらに鋭いボールを打つ。この第7ゲーム、フェデラーはよくナダルに迫ったと思う。しかしナダルがキープした。

第8ゲームは割とあっさりフェデラーがキープした。そしてとうとうナダルのサービング・フォー・チャンピオンシップ。最初のサーブ。フェデラーのボールがネットに嫌われコードボールとなり、それをナダルがアングルで返す。フェデラーのボールがネット、またネット、そして最後はナダルのクロスがウィナーとなって、勝負はついた。ナダル優勝。座り込んで頭のてっぺんを地面に押しつけた。

またまた放送時間がなくなり、セレモニーは見られず。もう嫌になっちゃう。フェデラーの寂しそうな顔が頭に焼きついてしまった。まさかエナンみたいに引退なんて言わないよね……。
 ナダル、よくぞ勝ったものである。クレーでは絶対に負けたくないという気持ちが勝負の女神を味方につけるのだろう。かなり危ない場面もあったと思うのだけれど……。感服しました。ただただ、おめでとうと言うだけだ。
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by slycat | 2008-05-19 01:34 | テニス

世界第2位を巡る攻防

MASTERS SERIES HAMBURG Semifinal
R. Federer d. A. Seppi 6-3, 6-1
R. Nadal d. N. Djokovic 7-5, 2-6, 6-2

第1試合については、あまり語ることがない。セッピのプレーは軽やかで魅力があったが、久しぶりに見るフェデラーの完璧さが印象に残った。まだ本調子ではないようではあっても、ボールの軌道や腕の振り抜きなどがきれい。恐らく人間工学的にみても、最も適した角度で最も適した力をかけてボールを打つんだろうなと思わせる。

語るべきは第2試合。世界ランキング第2位のナダルと第3位のジョコビッチはポイント差が接近しており、この試合で勝利を収めたほうが第2位となる、という状況に置かれていた。てっぺんにフェデラーという不動のNo. 1がいるため、ずっと第2位に甘んじていたナダル。ジョコビッチの躍進により、いまやその地位すら危うくなってきたとは……勝負の世界は厳しい。

モンテカルロは順当に優勝できたものの、大事なローマでフェレーロに敗れたことが痛かった。ナダルはクレー・シーズンでポイントを稼いでおかなければ、シーズン後半、いつでもジョコビッチに抜き去られる危険がある。
 片やジョコビッチはローマで優勝、クレーでもその実力を発揮する。貫禄すら感じさせるプレーは非常に安定感があり、パワーも十分。しかもメンタルがやたらと強い。何か伸び悩みを抱えているんじゃないかという気配のあるナダルに比べても勢いがある。
 そんなこんなで、何だか背水の陣みたいな格好になってしまったナダルにシンパシーを感じ、ナダルのほうに肩入れしながら試合を見た。

<第1セット>
ナダルのプレーはいつも通り、という感じ。お互いコーナーを突き、きわどいボールを連続して放つが、どちらかといえばカウンターのナダルに対して、ジョコビッチは自分からリズムを作れるところが有利に映る。案の定ジョコビッチが先にブレイク、あっという間にジョコビッチの3-0となってしまった。

ナダルのプレーは、クレーでも通用しなくなってしまったのだろうか。そんなことを考えながら見守っていたが、ナダルもダテにNo. 2の座を守ってきたわけではない。第4ゲームをキープし、第5ゲームでブレイクバック。こうなったら、とにかくナダルは自分の力を信じて、自分のやり方で点数を重ねていくしかない。

第7ゲーム、第8ゲームは2人ともサービスキープ。スペイン・セルビアの国旗が翻る観客席には、翌日の決勝を前に息子を心配したのか、フェデラーのお父様が座っている。
 そして迎えた第9ゲーム、また試合が動いた。ここに来てジョコビッチにエラーが続出、ナダルがジョコビッチに1ポイントも与えずブレイクに成功し、5-4と王手をかけた。
 ところが、サービング・フォー・セットの局面で今度はナダルにミス。しかもダブルフォルトまでやらかしてしまい、ドロップショットをうまく返したジョコビッチがブレイクバックした。

また振り出しに戻った。ジョコビッチは果敢にフォアの強打で攻めていくが、ナダルが粘る。ローマで裂けた足のマメ、完治しているとはとても思えないが、走る走る、回り込む。ジョコビッチのほうが返球のタイミングは早いのだが、ナダルも負けてはいない。ラリーを続けると、根負けするのはジョコビッチ。そして素晴らしいパッシングでナダルが再びブレイクして6-5となった。飛び上がって叫ぶナダル。いいぞぉ、ナダルが戻ってきた。
 そしてまたまたやってきたサービング・フォー・セット。密かに悪い癖だと思っているジョコビッチのドロップショットをナダルが絶妙のタッチで返す。次は切れのいいバックハンドでジョコビッチの横を抜き、さらにフォアのパッシングを決める。ベースラインにいるナダルに対して、ジョコビッチはむしろ積極的に前へ出ているのだが、この場面においてはナダルに分があった。最後は得意の逆クロスがきれいに決まり、ナダルがセット先取。最初の3ゲームはどうなることかと思ったが、いや〜さすがクレー・キングだね!

<第2セット>
ところが、ジョコビッチはやはり恐ろしい選手だった。プレーの抽き出しをたくさん持っていて多彩である。サーブも速い。ナダルに劣らず脚力がある。また、非常に速いタイミングでリターンできるのは大きな武器だと思う。第1セットで驚異的な粘りを見せたナダルだが、ここへきて徐々にジョコビッチのスピードとパワーに押されてきた。マイアミ決勝のときのダビデンコがそうだったが、ナダルを倒そうと思ったら、厳しいボールを打つのはもちろん、スピードで勝負するのが効果的なのだろう。

第5ゲーム、あわやナダルがブレイクか、と思ったが、ジョコビッチがネットに出てチャンスを作りキープ。第6ゲーム、今度はジョコビッチにブレイクチャンス。ナダルがデュースに持ち込み、腹を立てたジョコビッチがラケットを地面に叩きつける場面もあったが、畳み掛けるようなフォアの強打でナダルのリズムを崩してジョコビッチがブレイク。このフォアが効く。

その後も、特別ナダルが悪いわけではないのに、デュースに縺れてはジョコビッチが取るという展開に。ナダルは打ち負けてしまう。結局2ゲームしか取れずにジョコビッチが第2セットを取った。
 しかし本当に2人とも、咄嗟の反応が物凄い。2度ほどネット前でボレーの攻防があったが、お互い考える暇もなく打って、それが決まってしまうのだから驚きだ。

<第3セット>
泣いても笑ってもあと1セット。ジョコビッチのサービスゲームをナダルがブレイク。しかし一歩も引かない勝負の中、ボールを追ったジョコビッチが足を滑らせ転んでしまうと、ウィナーにもかかわらず、ナダルはガッツポーズをとらなかった。喜ぶよりもむしろ心配そうな表情を見せる。ナダルのこういうところ、スポーツマンらしい態度に心打たれる。思わず喜んじゃっても誰も責めないと思うんだけどね。

第2ゲーム、今度はジョコビッチにブレイクチャンス。「伯仲」という言葉がこれほどふさわしい試合はあるだろうか。ところが、大事な大事な場面でジョコビッチを不運が襲った。渾身のショットでガットが切れてしまい、ボールはアウト。座り込んで苦笑いをするジョコビッチ。思わず天を仰いで十字を切る。解説の辻野隆三さんによれば、今後はラケットを換えるタイミングを考えていかなければならないだろう、とのことだ。力だけでは勝てないプロの世界、本当に過酷である。
 取替えたラケットがしっくりこないのか、大事なポイントを失った打撃から立ち直れないのか、ショットがうまく決まらないジョコビッチ。ナダルがキープして2-0。ジョコビッチは再びラケットをコートに叩きつけた。

しかしこの子たちの精神力には頭が下がりっ放しだ。トラブルに見舞われても、セットを落としても、決して投げやりにならない。これが20歳と21歳だなんて、信じられない。気力が疲れを忘れさせるのか、プレーの精度も変わらない。意地と意地のぶつかり合いが、かえって清々しいほど。試合を見応えあるものにしている(ついでに、2人の肩から背中から、もうもうと立ち上がる湯気にたじたじとなってしまった)。

第3〜6ゲームはお互いにサービスキープ。しかし第7ゲーム、ジョコビッチに疲労が色濃くなってきた。球威が落ちたというわけではないのだが、ミスでポイントを失う。ナダルがブレイクして、ついにサービング・フォー・マッチ。ナダルも疲れているはずなのだが、衰えは感じられない。
 そしてジョコビッチも気力を振り絞っての強打で立ち向かう。ギリギリの場面だというのに、ここでもドロップショットでナダルを揺さぶる。
 またまたデュース。ここで再びジョコビッチのドロップショット。これはうまくいかなかった。ナダルにアドバンテージ。またもやジョコビッチのドロップショット。今度はナダル追いつけず、苦笑いが出た。ジョコビッチにブレイクチャンス。しかしボールが長過ぎた。ナダルにミス、ジョコビッチにブレイクチャンス。ナダルのサービスエース。ジョコビッチのドロップショットがネット。ナダルのボレーがネット。あぁ疲れる。
 
ジョコビッチのリターンを広い損ねてジョコビッチのポイント。しかしナダルのサーブがよかった。7回目のデュース。今度のサーブもいい。さらにジョコビッチのドロップショット。本当によく使うな〜。デュース8回目。いいサーブ、そしてネットへ出てボレーで決める。ナダルのマッチポイント、ラリーが続き、そしてまたまた放ったジョコビッチのドロップショットがネット、ついに試合が終わった。ナダルが第2位の座を守った。

観客が総立ちとなり拍手を送る。本当に拍手にふさわしい試合だった。もうすでにハンブルク大会が終わったような気になってしまった。
 普通だと、敗れた選手に「残念だった、次は頑張って欲しい」などと結ぶところだが、不思議とジョコビッチに対してはそんな言葉はふさわしくないように思う。これだけやって、それでもナダルが勝つなら仕方がない。と言うか、ジョコビッチが負けた、という気がしない。凄い試合を見た満足感だけが残るようだ。

いや〜しかし、こんなに体力を使ってしまって、楽々勝って休息をとったフェデラーに勝てるんだろうか、ナダル。久しぶりの対決となるフェデラーとの試合がどんな展開になるのか、全く予想できない。静かに夜を待つだけである。
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by slycat | 2008-05-18 15:42 | テニス

2度目の注射

17日はプーの通院日。プーをキャリーに入れ病院へ連れて行く。新幹線で通院している人に比べれば、door to doorで30分以内の距離なのだから大した苦労でもないのだが、小さなハムスターと違いプーは重みがあるので、キャリーを水平に保つのに気をつけながら電車に乗り、病院までの道を歩く。
 キャリーの側面は片方だけ網がついており、そこからプーの様子が見える。覗き込むとプーが寄ってくるのが可愛い。外出にもだいぶ馴れたようだ。

病院に入ると、ちょうど前の患畜が診察を終えたところ。まずは体重測定。900gになっていた。診察台に載せられ、すぐに注射。頸の後ろの皮膚をちょこっと持ち上げ、あっという間に終了。皮下注射は痛くないようで、プーの表情は変わらない(いつも無表情ではあるのだが……)。次に内服。これもあっという間に終わる。

この1週間ほどずっと気になっていたプーの右目の「目やに」について伺うと、まさにその目のあたりにダニが残っているのだという。
 ダニはノミや蚊のように動物の血を吸うのではなく、皮膚の角質を食べて生きているわけだが、皮下に潜り込んでいるのが厄介である。プーは2週間から1ヵ月に1度、お風呂に入れて身体を洗っているのだが、顔は洗えないのでこれまた厄介だ。ガーゼやコットンを湯や浄化剤で湿らせては拭いているものの、ザブザブ洗えればいいのになぁと思う。
 それでも、薬が効いて痒みはだいぶなくなったらしく、体重も増えているし身体つきもガッチリしてきた、と先生に言われて、飼い主は嬉しかった。

明けて18日、朝プーの様子を見ると、プーの家から突っ張った後ろ足が飛び出していた。まるでクリスマスのローストチキンのようだ。2度目の注射の後、突然死することがある……獣医さんの言葉が蘇る。
 「プー! プー!?」
 慌てて呼びかける。すると……プーが鳴きながら飛び起きてきた。あぁ〜よかった、熟睡していただけだった。紛らわしい寝方をするなっつーの。

もちろん、まだまだ安心はできないが、とにかくプーは今日も生きており、今日も食欲旺盛だ。若い頃には毎朝、その日どんな変化が起こるかが楽しみだった。今では、今日が昨日と同じだということが幸せだ。
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by slycat | 2008-05-18 11:24 | モルモット

エナン引退……

早すぎる、まだ早すぎる……。しかし彼女はもう決意してしまった。ジュスティーヌ・エナン、25歳。Randstad:Good to Know Youのビデオは半分本気で出演したのかな……。

タケゾウさんのブログで知ったが、ついにエナンがプロテニス選手としてのキャリアにピリオドを打った。

「素晴らしい冒険の終わり」「随分前から考えてきたこと」「すべてをテニスに捧げて生きてきた」「決意を覆すつもりはない」……

彼女の公式サイトには早速、ここ10年の歴史が記事にまとめられ掲載された。そう、ずっと走り続けてきたんだよねぇ。本当に素晴らしい冒険の日々だった。オリンピックの金メダルもとった。全仏3連覇も達成した。あと1つ、ウインブルドンのタイトルが欲しかった、と思うのは欲張りすぎだろうか。

「20年間テニスをしてきて、それが私の全人生だった。でも1人の女性としては、年齢を重ねたら、将来のことを考えなければならないのです」

世界ランキングNo. 1の座にいながらの引退。あまりにも潔くて、泣けてくる。
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by slycat | 2008-05-15 00:30 | テニス

よき時代のゲーム

ライノクス殺人事件
フィリップ・マクドナルド/霜島善明 訳 創元推理文庫

謳い文句は「英国本格の技巧派 半世紀ぶりに登場! 結末で始まり発端に終わる実験的手法の得難い収穫」。コピーの出来はよいと思わなかったが(表4の紹介文もよくない……)、先に復刊されていた同じ作者の『鑢』が結構面白かったので読んでみた。

目次を見ると、なるほど最初に「結末」があり、その後第1部から第3部、そして最後に「発端」と並ぶ。さらに要所要所に作者の「解説」が挿入されている。確かに実験的なのかもしれないが、クリスティを筆頭にロイ・ヴィガーズの倒叙物(迷宮課)とかエラリー・クイーンの「読者への挑戦」とか、いろいろな人がいろいろなことをやっているので、今読むとさほどの驚きはない。

半分も読まないうちに何が起こるか、そして犯人が誰なのか、ほぼわかってしまう。擦れっ枯らしのミステリ・ファンならもっと早く気づくだろう。しかし、この小説は単なる謎解きに終わらない面白さをもっており、ガッカリするには及ばない。むしろフェアプレイを通り越して読者にヒントを与えまくる作者の姿勢には、ニヤニヤさせられっ放しである。

さらに本書の後半では、前半の事件から派生する危機的状況を主人公(と言ってよいと思う)がいかに切り抜けるかに興味をそそられる。そしてハリウッド製コメディのようなドタバタ・アクションを楽しんだ後、ようやく「発端」に戻ってしみじみと事の顛末を噛み締めれば、フルコースを食べ終わったような満足感(しかも自分の「推理」能力を勘違いして喜べる)。後味もすっきりである。

殺人事件のトリックについて、解説の臼田惣介氏が日本人作家の「某名作を髣髴させる手の込んだものだ」と書いているが、私もすぐに連想した(実はこの「某名作」を読んだだけでは仕掛けがよく理解できず、映画化されたものをDVDで見てようやく「ああそうだったのか」とわかった、という経緯があって余計に印象に残っていた)。全体に軽い調子で書かれているので読み飛ばしがちだが、肝腎なところはきっちりと、本格推理小説の伝統に従って書き込まれている。この辺も魅力である。

けれども、本書の中で一番光っているのは、常に人生を楽しもうとする“ゲームの精神”だろうか。楽しんでしまえば、殺人事件でさえ幸せの種になる。そんな“逆説”を証明して見せたことが、本書における実験だったのかもしれない。
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by slycat | 2008-05-12 23:56 | ミステリ

AMS ローマ決勝

N. Djokovic d. S. Wawrinka 4-6, 6-3, 6-3

第1試合はロディック、第2試合はステパネクの棄権により、あっけなく終わったローマ準決勝。ロディックは背中を傷めたとのこと、ステパネクは試合開始直後から見るからに気分が悪そうだった。残念なことだが仕方がない。2人とも、無理せずじっくり治療して欲しいものである。

ある意味不完全燃焼で決勝に進んだジョコビッチとバブリンカ(ATPのガイドではva-VINK-ahと発音する、と書かれているが、バビンカでは誰のことかわからないのでバブリンカにする)だが、体力は温存できたはず。今日こそは面白い試合が見られるだろうと期待した。

ジョコビッチは最初からドロップショットを多用。相手の出方を見ているのかなぁ。バブリンカのほうはいきなりダブルフォルト、やっぱりジョコビッチが断然有利かと思ったら、どっこい先にブレイクしたのはバブリンカ。得意なサーフェイスはクレー、というだけのことはある。シングルのバックハンドがとてもきれいで、打たれたボールは凄い角度で飛んでいく。フォアの逆クロスもきれい。
 少し風が吹いているらしく、動くたびに前髪がフワフワとなびくバブリンカ。涼し気な顔である。片やジョコビッチはいやな汗をかいているようで、ツンツンヘアがじっとり濡れている。バブリンカが第1セットを取った。

体調が悪いわけでもなさそうだが、なぜか思うような球が打てないらしいジョコビッチ。大声を出して自分自身を叱りつける。
 だがさすが世界のNo. 3、いつまでもグジグジはしていない。徐々にペースを摑み、畳みかけるようなフォアをビシビシ打ち込んで第6ゲームでブレイク。拳を何度も振って自らを鼓舞する。
 このまま行けばいいのに、再びジョコビッチがクロスにドロップショットを放つ。バブリンカが落ち着いて返してポイントを取る。結局はジョコビッチが攻めてサービスキープしたものの、あんまりドロップショットに頼らないほうがいいんじゃないか、などと思う。しかし、余計なお世話だった。ジョコビッチはその後ガンガン打ちまくり、素晴らしいフォアを次々と決めていった。第2セットはジョコビッチが取った。

第3セットは第1ゲームから凄いラリーとなった。お互い闘志がむき出しだ。打ち勝ったのはジョコビッチ、のっけからブレイクに成功した。第2ゲームでまたもやドロップショットをミスするジョコビッチ。だからやめなさいってば。しかしちゃんとキープして2-0に。
 第3ゲームでもジョコビッチがドロップショット、これは成功したが、バブリンカがキープ。しかし、明らかにジョコビッチに押され気味である。蛍光グリーンから白いウェアに着替えて次のゲームに臨む。

それにしてもジョコビッチのフォアは凄い。威力もあるが、何と言っても強気の姿勢がいい。ちょっとムキになっているようにも見えるものの、ちゃんとポイントにつながっている。これが若さの力なんだろうか(バブリンカだってまだ23歳なんだけど)。

バブリンカがトレーナーを呼ぶ。背中にクリームのようなものを擦り込んだようだ。
 第6ゲーム、ジョコビッチのサーブ。心無しかボールをつく回数が増えたが、動揺していたわけでもなさそうだ。あっさりとキープする。
 追い詰められつつあるバブリンカだが、相変わらずバックハンドから繰り出されるのは厳しいボール。ジョコビッチもよくついていく。0-40で難なくキープと思われたがここでももつれた。3回のデュースをバブリンカが辛くも制した。見応えのあるゲームで、見ているほうの肩が凝ってしまう。

何とかしようと頑張るバブリンカだが、ボールが長過ぎる。ジョコビッチの守りの堅さが際立っている。ここでもドロップショットを使う。気になるなぁ……。解説の丸山さんは好意的に受け取っていたが、せっかくフォアの強打が素晴らしいので、もっと見たいと欲が出てしまうのだ。
 バブリンカは最後まで諦めなかった。投げやりな気持ちなど微塵も見せない。観客を十二分に満足させる真摯な打ち合いが続く。

最後はジョコビッチのウィナーで試合が決まった。緩いカーブを描くボールの次は早いタイミングでの返球、そして高い打点からの強打と、組み立ても完璧だった。ジョコビッチは強い。近い将来、間違いなくNo. 1になるであろう選手の成長に、今自分も立ち合っているんだなぁと思う。

残念ながら今回の放送ではセレモニーが映らなかった。バブリンカのスピーチが聞きたかったのに……。女子ジャーマン・オープンの決勝が控えているからなのだろうが、物足りない気持ちである。「放送開始までしばらくお待ちください」なんてテロップを流すくらいなら最後まで放送してくれ、GAORAサン。
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by slycat | 2008-05-12 00:21 | テニス

食欲の初夏

連休中の3日、プーは再度動物病院へ行き、注射されて薬を内服した。その日はたまたま仕事が入っていたため夫と息子が連れていったが、注射されても痛そうな素振りは見せなかったという。体重は880gになっていた。

痒がって痙攣する回数は減ったものの、完全に治ったわけではないらしく、今でも時折発作を起こしているのが心配の種である。強い薬だって聞いているのになぁ。通常2回投与だというので、次に注射したら治るのかもしれない。しかしそのときが「危ない」というのだから、まだまだ心配だ。

大阪へ行っている間に、注文しておいた生の牧草が届いており、プーは夢中で食べる。ふだん与えている乾燥した牧草もよく食べるが、食べっぷりが違う。同じ草食動物であるウサギのウーさんの食いつきもいい。やっぱり美味しいのだろうか。

しかし、ちまちまと注文するのも何だと思って2kg頼んだら、私がいない間に家ではパニックが起こっていた。生なので冷蔵庫に入れなければならないのだが、かさばること、かさばること。夫が「衣類の圧縮袋」なるものを買ってきて、2つに分けて野菜室に押し込んだ。

そして2週間後。すでに牧草は食い尽くされ、新たに注文した牧草が届いた。とにかく、ひと摑み与えると、それがなくなるまでひたすら食べている。
 プーが喜んで食べてくれるのは私にとっても幸せなことだが、何事にも落とし穴があるもので、この生牧草、入手できる時期は限られている。自然のものだから当然といえば当然であるが、販売期間が終わったら、また元の乾燥牧草を与えなければならない。しかしそのとき、口が肥えてしまったプーは、乾燥牧草を食べてくれるのだろうか?

今はとりあえず幸せなプー。来週の土曜日にはまた注射、それまでに体力をつけておかないと。明日のことは明日考えよう。f0061021_20232960.jpg

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by slycat | 2008-05-10 20:34 | モルモット

文楽4月公演:その2

4月27日(日)は4月公演千秋楽。前の晩よく眠れたので体調は万全である。ホテルで朝食をとりチェックアウトの後、文楽劇場へ向かう。都会の真ん中とはいえ朝の空気は清々しい。
 今回初めて、劇場の展示室に入ってみた。手にとってもよい、ということなので三味線や人形遣いの方が履く下駄を触ってみる。三味線やバチが思っていたよりずっと重く、反対に下駄が軽いのに驚いた。

日吉丸稚桜
〜駒木山城中の段〜
今回の座席は前から2列目。字幕を読むには辛い席なので、手許に床本を開いておいたが、この演目も次から次へと事件が起こるので、手許なんか見る暇はない。

舞台は駒木山城。父親と夫が不仲になったためにこの城で暮らす萬代姫を救うため城に忍び込んだ男を藤吉の家臣・茂助が捕らえてみれば、相手は義理の父、鍛冶屋の五郎助。しかも藤吉とは旧知であるという。五郎助は藤吉に話があるからと言って、場に現れた幼い息子を連れ、奥の間へと入っていく。

五郎助が昔自分の恩人を斬ったと知り、茂助は妻のお政を離縁すると告げる。驚き、悲嘆に暮れるお政は、刀で喉を突いて自害を図る。隣の部屋からお政の母(つまり五郎助の妻)がまろび出て「娘が自害した」と嘆き悲しむが、五郎助は平然と、婿の茂助に敵・斎藤方の本拠地への道を教える。

実は五郎助は斎藤家の家臣、加藤忠左衛門清忠だった。五郎助は、お政は勘当したから妻として看取ってくれと茂助に頼むが、突然娘の首を斬る。さらにびっくりの周囲をよそに、娘は主君の娘、萬代姫の身替わりとなったのだと言い放ち、主君を裏切ったため影腹を切っていたことを明らかにする。藤吉は五郎助の忠義心を褒め、息子の竹松を召し抱えて加藤虎之助正清と命名することを告げる。

竹松が喜んでいるところへ別口の曲者が現れ、五郎助の裏切りを斎藤家に注進せんとする。茂助が取り押さえようとすると、幼い竹松が庭の大石を持ち上げ、曲者に投げつけて早速手柄を立てる。この竹松はおかっぱ頭の可愛らしい人形で、何気なく登場したのに終わりにきて大活躍。場面をさらい、客席は大いに沸いた(この男の子が白金に祀られている清正公なのか)。

しかし何たる濃い内容。やっぱり2日に分けて観ることにしてよかった。休憩が入るが、時間が中途半端なので昼食はとらず、売店を覗いて住大夫さんの写真集(サイン本……)を買った。完全にミーハー・モードである。
 次の演目はさらに力が入りそうなので、カフェインをとってリフレッシュ。再び客席に戻る。

桂川連理柵
〜石部宿屋の段〜
実際に起こった事件を基に書かれたお芝居だそうである。帯屋の主人、長右衛門は遠州からの帰り道、ちょうどお伊勢詣りから帰ってきた隣家・信濃屋の娘、お半と出会い、同じ宿に泊まり、なりゆきからお半と過ちを犯す。お半に言いよっていた信濃屋の丁稚、長吉は、仕返しに長右衛門が遠州の大名から預かった刀をすり替える。

〜六角堂の段〜
帯屋長右衛門の妻、お絹が六角堂の観音様にお百度を踏んでいると、帯屋の儀兵衛が現れ、長右衛門は川東の芸妓に入れあげている上に、信濃屋のお半に手をつけたと言い、お絹に言い寄る。うまくあしらって追い払うと、丁稚の長吉が現れる。お絹は、自分の言うとおりにすればお半との恋をかなえてやると言い、金を渡す。

〜帯屋の段〜
刀がすり替えられたことで窮地に陥った長右衛門が家に戻ると、隠居の後妻、おとせと連れ子の儀兵衛が金の遣い込みを長右衛門になすりつけ、あれこれと言いがかりをつける。しかも儀兵衛がお半が長右衛門に宛てて書いた手紙を読み上げるものだから、ますます長右衛門の立場が悪くなる。しかし、このような事態を予測して長吉を言い含めておいたお絹の機転で救われる。この辺り、嶋大夫さんが大勢いる登場人物たちの個性を見事に語り分け、儀兵衛と長吉のやり取りでは腹を抱えて笑わせていただいた(……しかし長吉よ、結局君は刀をどこへやったんだ?)。
 残念ながら今回、切を語るはずだった綱大夫さんは病気のためお休み。ピンチヒッターは千歳大夫さんだった(「切」が「奥」となるんですね?)。『壺坂観音霊験記』のときは、あまりの大音量に少々引き気味になってしまったのだが、今回の千歳大夫さんはとてもよいと思った(素人が何を偉そうに、なのだが)。
 特にお絹が心情を吐露するところ、しんみりとして胸に響いた。考えてみるまでもなく、このお話では、お絹が一番可哀相である。あれこれと言いたいことは山ほどあるだろうに、夫を思い遣り、「私も女だもの、飽きられないようにするから見捨てないでね」とすがるところがいじらしい。
 しかし、お半も可哀相。妻のある人に14歳で恋をして、あろうことか身重になってしまった彼女は、長右衛門に別れを告げて死にに行く。長右衛門ってそんなにいい男なのか。女2人を不幸にして、ホントにとんでもない奴だな〜と思う。

〜道行朧の桂川〜
お半に追いつき、彼女を背負った長右衛門、そなたは生き永らえてくれ、と諭すものの、お半の決意は固かった。蓑助さんが「ハッ」と声をかけて見せてくれた“うしろ振り”に、まぁ何て格好いいのかしら、と惚れ惚れ。この場面では、運命のいたずら(と言うには長右衛門の罪が大きいと思うけれど)で死ななければならない男女の思いが、ここぞとばかりに美しく表現されていた。
 14歳の少女と中年男の恋……と呼ぶのも微妙な関係。長右衛門って、きっと太宰治みたいな人だったんだろうな、と思う。優しさが仇になるタイプなのだな。深く考えると陰鬱なお芝居なのだが、これが人形のよさ、ドロドロにならず、美しかったという印象ばかりが残った。
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劇場の外で出るとよく晴れており、暑いくらいの陽気である。飛行機は最終便なので時間はたっぷり。ちょうどよい機会なので、生國魂神社を訪れてみる。
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誰もいないかと思ったが、お詣りする人が結構いた。しかも若い人が、きちんと鳥居をくぐる前に深々とお辞儀をして行く。いい年をしてロクに作法も知らない自分が恥ずかしい。ここには浄瑠璃神社もあるので、続いてお詣りしていく。
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ゆっくりとなんば方面に戻り、地下街で洋服を見たりして過ごした後、地上に出ていろいろな商店街を歩く。大阪の商店街って全部アーケードになっているんだろうか。途中、チーズケーキの店に行列ができていたが、不思議なことに同じケーキの2号店の前はガラガラだった。長時間並ぶくらいなら2号店に行けばいいのに。
 また、小学校の校庭で赤テントを見た。いやぁ、唐十郎さん、いまだにテントやってるんですかぁ。新宿の花園神社でも見たことがないのに、大阪で見かけるとは。

5時を回ったので、以前息子と行った重亭のすぐ先にある野菜料理の店に入って昼食兼夕食をとる。ビールを飲みながら白和えやれんこんまんじゅうを食べ、筍ご飯で締めた。同じ大テーブルで食事をしていた女性2人組が深刻な話をしていて、しかも1人が泣き出してしまったのには往生したが、食事はとても美味しい。最初はそんなに飲むつもりがなく小さいグラスで頼んだビール、結局お代わりしてしまった。

思いのほかのんびりしてしまい、リムジンバスの時間が迫ってきたので、夫に頼まれた“豚まん”を買い、慌ててなんば駅前のバス乗り場へ。商店街を歩く人々を縫って歩くのが大変だった。大阪の人って、昔は歩くのが速かったような気がするのだが、このところ何度か大阪を訪れるたびに、みんな歩くの遅いな〜と思う。

伊丹空港に到着。手荷物検査はすんなり通ったが、肝腎の人間のほうは金属反応が出て足止めされた。実は羽田でも引っかかったのだが、ジーンズのベルトがいけないらしい。別に悪いことは何もしていないので、いいんだけど。

次は8月に行くつもりだが、お金とスケジュール、大丈夫かなぁ。東京と大阪の往復にもだんだん馴れてきた。次回の訪問が実現することを願っている。
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by slycat | 2008-05-07 11:37 | 文楽