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ミステリ・テニス・ハムスター・モルモットについてあれこれと……
by slycat
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通し狂言 絵本太功記〜こってりと盛り沢山

通し狂言『絵本太功記』  於:三宅坂 国立劇場小劇場

爽やかなそよ風が吹く週末、文楽五月公演に出かけた。14年ぶりの通しでの上演らしいのだが残念ながら第一部だけ観る。席は前から6列目、太夫さんたちのすぐ左である。
 今回、初めて「三番叟」を観ることができた。今まで、午後からの部ばかり観ていたため、上演前にこのような踊りが披露されることすら知らなかったのである。友人によれば舞台のお浄めの意味があるということだ。
 詳細はよくわからず、何の人形かもわからないのだが、冠っている帽子が何だかエキゾチック(虎のような縞に赤い丸がついている)。衣装は黒。袖の形から武士などではなく、宮中に関係する人なのかな。後でちゃんと調べよう。
 一人で操作する小さめの人形だが、踊りの際の袖の処理を観ていて、ああ着物の国ならではの動きだ、と思った。

発端 安土城中の段
こういう始まり方を観るのは初めてで、幕が開くと最初から登場人物の人形がでんと控えているのだが、主遣いの人がおらず、人形1体に2人ずつ。太夫さんも姿を見せない。
 泉州妙国寺から植え替えた蘇鉄の木が、毎晩「妙国寺へ帰らん、返せ返せ」とうるさく吠えるので、尾田春長(織田信長)が捕まえてあった僧を引っ立ててさんざん侮辱するのを武智光秀(明智光秀)が諌めると、かえって主の怒りを買い頭をバシバシ叩かれる、というシーン。現代の私たちが見ても「わーこれっていじめ。陰湿!」と思うのだから、この後本能寺の変に至る「発端」としてはなかなか天晴。

最近、ケーブルテレビで毎晩『人形劇 三国志』を見ており、息子とともにはまって原作の「演義」も読み返したのだが、この中でも横暴な主がいると、部下の者が「臣には礼を以てあたれば、臣もまた忠をもって返す」とたしなめる。
 たとえ組織のてっぺんにいる者でも、礼を忘れては人心が離れていくのは昔から世の常、人の常。春長が礼を欠いており、君主にふさわしくない人物であると納得されなければ(人形の頭は明らかに「悪い奴」だから皆すぐ理解するんだろうけれど)、光秀はただの謀反人、不忠の輩になってしまうので、当然だめ押しが続く。

二条城配膳の段
春長の子が朝廷から位を授かることになり、勅使のおもてなし役を光秀と森の蘭丸が務めることになっている。日頃から光秀の忠誠心に疑いを抱く春長にそそのかされた森の蘭丸が、お膳を運んできた十次郎(光秀の子)にいちゃもんをつけ、その上悪口雑言。さすがに怒った光秀を春長がねじ伏せ、そればかりか蘭丸に十次郎の前で光秀を打つように命じる。これも凄く陰湿な感じである。
 蘭丸に扇でさんざん打たれ、冠っていた烏帽子が落ちると、光秀の額には傷ができ、ぬぐう懐紙には血が滲んでいる。それでもじっと耐える健気な光秀を、春長は二条城から追い出す。このむごい仕打ちのお蔭ですっかり光秀の味方になり、次の段へ。

千本通光秀館の段
光秀の館で妻の操が、夫が無事大役を果たせるよう祈っていると、光秀親子が早々に帰ってくる。二条城で起こったことを聞き、家臣の田島頭(金時という頭らしい、顔が真っ赤でど派手な衣装)がいきり立ち蘭丸を討つと言うと、九野豊後守(白い顔、舅というらしい)がこれを止める。
 光秀はあれほどのいじめを受けながらも忠誠心篤く、春長はああいう気性だし、蘭丸は主人の言いつけ通りにしたまで、とただ耐えている。そこへ突然春長からの使者が到着し、中国地方への出陣と領地替えを命じられる。今住んでいる領地からは即刻出て行くように言われ、「委細承知」と答えるものの、さすがに「どうする? 光秀!」という感じ。
 ここで家臣の田島頭が喚き出し、しきりに謀反を勧めるのに対して、豊後守は「反逆謀反の輩が本意を達せし例はなし」と思いとどまらせようとする。沈黙する光秀。
 しばらく沈黙を続けた後、いきなり光秀が豊後守の首を刎ねてしまい、びっくり仰天した。これが「謀反の門出」となるのだが、えー何もそんな殺さなくても、と戸惑う。血気にはやる者の言葉に煽られて正しいこと(後世の人間から見れば)を言っているほうを斬ってしまうとは……。これはやっぱり、いくらお芝居とはいえ謀反を正当化するわけにはいかないから?ですか。

六月二日 本能寺の段
阿野の局、蘭丸とともに酒宴に興じる春長。訪ねてきた孫がおねむになったので春長らが宴をお開きにして去ると、蘭丸と腰元しのぶとが恋人たちのうれし恥ずかし恋のシーンを披露する。繰り返しいじめのシーンを見せられてきた観客にとってもしばし憩いのひととき(?)である。しかし当然のことながら、これは嵐の前の静けさ。夜も更けた頃、突然光秀謀反の報せが入り、寝間着姿の蘭丸、力丸(蘭丸の兄弟)が刀をとって応戦するも、多勢に無勢。女だてらに薙刀で敵を切り伏せ負傷した阿野の局(非常に格好いい)に別れを告げ、春長は覚悟を決める。
 可哀相なのはしのぶで、兄齋藤蔵之助が光秀方についたために自害、臨終の際に蘭丸と夫婦にしてもらったのがせめてもの救いだが、先ほど恋する乙女の可愛らしい姿を見ている者には同情を禁じ得ない。

ここでいったん休憩。天気がよいので劇場の外に出て、ベンチに座りコンビニで調達したおにぎりを頬張る。ふと足下を見ると雀が何羽もやってきて、もの言いた気な顔でこちらを見ている。周りを見渡すと、やはり外で昼食をとろうと出てきた人たちがパンくずなどを与えている。
「雀もランチタイムだって知ってるんだねー」などと友人と話しながら、ご飯粒を投げれば、我れ先にと雀が寄ってくる。国立劇場の隣のビルに巣を作っているらしく、餌をゲットすると巣に飛んでいく。久しぶりに野生の生き物と触れ合った、心和むひとときでありました。

六月五日 局注進の段
六月三日、四日のお話が飛んでいるので、ここからのお話がよくわからない。腹がふくれると眠気が襲い、ますます頭が混乱する。舞台は真柴久吉(羽柴秀吉)の陣に移り、そこへ久吉が攻めている清水長左衛門の使者と名乗る僧と娘が訪ねてくる。娘、玉露は久吉の陣に入り込んでいる浦辺山三郎に会いに来たのだが、山三郎は久吉を討つ気持ちは失せ、自害を決意している。何だかよくわからないうちに話が進み、とにかく久吉というのはなかなかの大人物なんだな、ということだけを理解する。山三郎と玉露は、久吉から書状を受け取り郡家に帰る。
 そこへ阿野の局が光秀の謀反と主君の死を告げに辿り着き、久吉は愕然とするが、ひとまずは混乱を避けて春長の死を秘密にしようとする。

長左衛門切腹の段
春長の死を立ち聞きした僧、安徳寺恵瓊が早速郡氏に報せようとするところ、久吉に呼び止められる。久吉が投げつけた袈裟は、以前自分が「天下を取るであろう」と与えたものだった。
 山三郎からの書状を読んだ長左衛門(吉田文吾さん、さすがにお顔を覚えた)は、味方の助命を条件に切腹。久吉と和議を結んだ援軍郡方の小梅川隆景に子を託し、安心して息を引き取る。

妙心寺の段
光秀が陣を構える妙心寺。光秀の母(吉田文雀さん)は主君を討った息子を許せず、“浅ましき”姿で寺を立ち去る。すかさず光秀が「母人の御行方何処までも見届けよ。御手道具の用意、用意」と宣えば、家来が一斉に箪笥、長持その他もろものを担いで後を追う。行列の最後の者は手桶に飯台(たらい?)まで持っており、ここでドッと観客が大笑い。私はボーッと観ていて笑い損なったが、別に笑ってもいいんだよね?
 母に拒絶され、ひとり主君殺しの罪に悩む光秀は、唐紙に辞世の句を書き残すと切腹をせんとする。「順逆無二門、大道徹心源、五十五年夢、覚来帰一元」。さらさらと文字が書かれるところはお見事。友人が隣から双眼鏡を貸してくれたのでくっきり見えた。
 と、そこへ立ち聞きしていた(またもや……立ち聞きする登場人物が異常に多いね)田島頭が飛び込んで来て、自害なんて馬鹿馬鹿しいと説得する。心の迷いを振り切った光秀は栗毛の馬に跨がり都に向かうのだった。

これからいいところ、なのに途中で席を立つのは無念だが、正直言って第一部だけでどっと疲れた。光秀らの人形が「でか!」と驚く大きさで、その人形がひらりと馬に飛び乗るところなど動きがあって面白かったし、いつにも増して豪華な舞台セット、何人もの人物が入り乱れる複雑な筋書、恋あり、親子の情ありと盛り沢山でお腹がいっぱいである。
 人形の数も多かったが、今回は「東西、と〜ざぁ〜い」の口上を務める黒子さんが交替で3人くらいいらっしゃった(ひとりは太夫さんの名前を告げる際、「噛んで」しまった)のも珍しかった。

劇場の右側に座り、舞台中央を観ようとする位置に、座高の高い男性が座っていて頭が邪魔で困ったのだが、幸い(?)途中で眠ってしまったようで頭を斜めに垂れてくださったので助かった。
 最近の映画館は席1列ごとに段差がついていて、前の人の頭はそれほど気にならなくなっているのだが、ここではほんとに困ってしまう。ひとりの頭が飛び出していると、後ろの人間(つまり私)が頭を左右に振ることになるので、そのまた後ろの人もさぞ迷惑だろう。椅子には深く座って鑑賞したいものだ。

かたや、左隣に座った女性は、人形にはあまり興味がないのか、太夫さんたちを一心に見つめ、三味線に合わせてリズムをとっていた。そういう観方もあるんですか……。ベテランの太夫さんには身を乗り出して拍手するが、若手(?)の方のときは拍手をしなかった。それっていいのかなぁ……。少し疑問が残った。

先日、『摂州合邦辻』をテレビで観て、やっぱり生で観たいもんだなーと思ったので、全体的な感想としては大満足。願わくば、生きてるうちにもう一度通しでちゃんと観てみたい。
by slycat | 2007-05-13 14:44 | 文楽
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